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マツコに続き、さんまも34年ぶり出演…大物たちを惹きつけるテレ東の「弱者の兵法」

2018年7月8日11時0分  スポーツ報知
  • 34年ぶりにテレビ東京の番組に出演する明石家さんま

 「弱者の兵法」という言葉がある。戦いの際、戦力が劣る者は接近戦やゲリラ戦に持ち込んだ方が戦果が上がるという考え方―。5日にテレビ東京の定例社長会見を取材した際、ふいに、そんな場違いな言葉が頭に浮かんできた。

 会見前にテレビ業界をにぎわせていたのが、お笑い界のモンスター・明石家さんま(62)が14日放送の「出川哲朗の充電させてもらえませんか?」(土曜・後7時54分)にゲスト出演、34年ぶりにテレ東の番組に出演することだった。

 早速、小孫茂社長(66)に、この件に関する質問が飛んだ。当然、喜びの声が返ってくるだろうとは思っていたが、社長の言葉は予想をはるかに超えていた。

 「本当にありがたいことだなと思いました」と、まずは本音を吐露。「テレビ局というのは皆様あっての事業。出演者の方に選んでいただくことが大きい。その輪が広がって、視聴者の皆さんに見ていただく。そして、クライアントに広がっていく。最近、弊社の番組について評価が上がってきて、お褒めいただくことが多い。ということは、その三つの輪が広がったという事だと思っています。また、その輪が広がるといいなと思っています」と的確な言葉で情勢を分析した。

 この後の言葉が凄かった。「今回の出演は涙が出るくらい、うれしいこと。いろいろな形でコラボレーションができた。その輪が広がっていけばいいなと。今後もさんまさんに出ていただけるような局になっていければいいなと思います。励みになるような局になれればいいかなと思います」。

 どうだろう。民放キー局社長の、この“下から目線”の言葉の数々。1981年から84年まで同局で深夜番組「サタデーナイトショー」の司会を担当していた、さんま。高視聴率を記録し、人気だったが、お色気が強かったこともあり打ち切りに。ショックを受けたさんまは以降、同局の番組には出なくなったという説もある中の、この心からの感謝の言葉。聞いているこちらにもストレートに伝わってくる熱量があった。

 記者の間でかねてから「面白い」「言葉が的確」と評判の小孫社長の会見での受け答え。元々、日本経済新聞の編集局長も務めた記者出身のトップ。取材する側の思いも存分に分かっているだけに、その言葉の力、表現力、サービス精神は筋金入りだ。

 同時に1か月前の定例会見での小孫社長の言葉も思い出した。5月19日から6月10日まで同局の特別番組5つに立て続けに出演した「無理矢理、マツコ。テレ東に無理矢理やらされちゃったのよ~」で7年ぶりの同局番組出演となったタレントのマツコ・デラックス(45)について、私が質問した時のことだ。

 小孫社長は「テレビ東京が今、元気があるということになって、今まで考えられなかった、久しぶりの方や初めての方が出ていただけるようになった。実際に番組を見て、なるほどと納得することが多くて、社員、スタッフもマツコさんに教えていただいている感じ。いろいろな意味で参考にしたいと思います。ありがとうございます」と感謝の言葉を続けた。

 マツコが収録の際に言った「みんな、テレ東のことを勝手にすごく良く思ってるのよ。テレ東は、もはや弱者ではない!」という“名言”についても、同社長は「『テレビ東京は弱小じゃない』っておっしゃった。お褒めいただいたけど、テレ東は相変わらず弱小です。弱小と分かった上で励まして下さったんですかね。もう少し直した方がいいよと」と謙虚に受け止めていた。

 そう、この言葉こそが“肝(きも)”だ。予算規模、人員数などでNHK、他民放キー局に劣るテレ東だけに勝負はあくまで企画力。大予算をかけられない分、若手制作者たちのパッション(情熱)で勝負。ワンコンセプトで突っ走る番組「緊急SOS!池の水ぜんぶ抜く大作戦」、前述の「出川の充電」などヒット作を次々と生み出しているのが今のテレ東だ。

 低予算の中、知恵を絞って生み出された魅力的な企画に大物たちまでが心を動かされ、出演。そして、その状況を謙虚に受け止め、成果にあぐらをかくことなく、率直な喜びの声を会見を通じて発信するトップ。テレ東を取材し始めて2年。この局は思ったよりも、したたかで、たくましい。

 マツコの言葉を借りれば、「テレ東はもう弱者ではない」だが、この際、はっきり言おう。テレ東は意外と強者(つわもの)だ。(記者コラム・中村 健吾)

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