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元アスリートから学ぶ、心ない報道陣の質問

2018年8月10日16時0分  スポーツ報知
  • 寺川綾さん

 最近、競泳のロンドン五輪女子100m背泳ぎ銅メダルの寺川綾さん(33)と話す機会があった。美人スイマーとして人気を博し、今は9日から東京で開催中の「パンパシフィック選手権」でテレビ朝日のリポーターを務める。

 取材をする側の立場になり「当たり前のことしか聞かないリポーターになりたくないですね」と笑う。自分にしか引き出せない言葉を聞こう、というやる気が伝わってきた。

 その一方で「(仲いいからといって)ずうずうしく聞きすぎるのもな…。失礼があってもいけないし」とも口にした。さらに「金メダリストのしている苦労なんて、私には想像できないし…」とぽつり。世界3位のスイマーもそんな風に思うのだと驚かされた。

 私もインタビュー取材する時は相手に勉強不足と思われないように下調べはする。だが、質問を考えるのは予習前にするようにしている。失礼な質問が思いついてしまっても、その方が読者の関心に近づけると思うからだ。予習後に質問を考えると余計な気遣いや忖度(そんたく)が生まれるような気がしている。

 その代わり、リスクも大きい。休養明けの2人組アーティストに「相方と仲悪いんですか?」や、女性大臣に「総理と結婚などは…」などと失礼な言葉をぶつけるとオリジナルな反応が返ってくることもあるが、場を凍らせることもある。自分の過去のインタビュー記事を見ると、大きな見出しになっているのは、予習前の質問から引き出された答えが方が多い。だが地雷もたびたび踏んできた。

 寺川さんも選手時代、報道陣からの失礼な質問をよく浴びたという。「わざと負けたんですか?」「残念な結果でしたね?」などとの無礼な質問は、現役を離れた今でも覚えているとのとこと。失礼を地で生きてきた私は思わず目をそらした。

 元選手で現役選手との交流もある寺川さんには常人にはできないところまで踏み込んで、アスリートの心境に迫ってほしい。自身も「バランスが難しいですが、自分の宿命と思って諦めます」と悟っている様子だった。「相手が薄いガラスのハートだと思って、なるべく褒める部分を見つけてあげたい」との言葉になるほどと思った。

 あの時のバンドマン、女性大臣、ヨットスクールの校長…。うまく褒め言葉を見つけていれば、みんな違う反応をしてくれたのかも知れない。入社17年目にしてまた一つ勉強することができた。

(記者コラム)

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