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「車いす女子」猪狩ともか&中嶋涼子の出会いで日本のエンタメ界はどう変わる?

2018年10月8日12時30分  スポーツ報知
  • 猪狩ともか(右)と中嶋涼子
  • 仮面女子・猪狩ともか
  • 「車いすウイリー」を見せる中嶋涼子

 最強の地下アイドル「仮面女子」の猪狩ともか(26)=スチームガールズ=と、障がい者専門芸能事務所「Co―Co Lifeタレント部」の中嶋涼子(32)が3日、埼玉・航空公園で初対面した。

 その場面を取材した、両者の事務所と交流があり自身も内部障がいを抱えている記者には、“いがとも”こと猪狩が“車いすの先輩”中嶋に会えたことを、とても喜んでいるように見えた。

 猪狩は、今年4月、都内で倒れてきた看板の下敷きとなり胸、腰などを大けが。下半身不随となり、車いす生活になった。懸命のリハビリを乗り越え、8月26日に東京・秋葉原の常設劇場「仮面女子CAFE」で一時復帰。以後、大ファンのプロ野球・西武の始球式を行ったり、障がい者スポーツを広める活動などを行っている。

 9月26日に約5か月半入院していた病院を退院。同29日には、自身がリーダーを務める「仮面女子・スチームガールズ(=スチガ)」のメンバーの生誕祭のため、復帰後2度目の劇場出演を果たした。

 一方の中嶋は9歳の時に、横断性脊髄炎による下半身不随で車いすの生活に。それでも、好きな映画を通して世界中の文化や価値観に触れる中で、自分でも映画を作って人々の心を動かせるようになりたいと夢を抱き、単身渡米。南カリフォルニア大学映画学部を卒業し、帰国後は映像エディターとして働く中で、同事務所の車いすパフォーマンスユニット「BEYOND GIRLS(ビヨンド・ガールズ)」と車いす不良ユニット「BadAss Sores(バッドアス・ソアーズ)」として活躍している。

 お互いに「会いたい」と熱望していた2人。ついにこの日、ふたりの希望がかなった。

 初めて顔を合わせて早々、中嶋が“車いすウイリー”(前両輪を宙に上げて、後両輪だけで走行)を見せると、猪狩は「すごい! 自分も一緒にやってみたいけど、まだ段差を超えるために前輪を浮かせただけでも恐怖心があります」と羨望のまなざし。猪狩も中嶋にスチガの決めポーズを教えるなど、交流を深めていった。

 対談では、猪狩が「この前、初めて(車いすからの)転落を経験しました。痛いよりも、恥ずかしいという気持ちがあって」と告白すると、中嶋は「誰もが通る道。“車いすあるある”みたいなものですよ」と優しく車いすの後輩に語りかけた。

 猪狩は余程うれしかったのか、その後も、映画館に行った際の「車いす専用の席に通されても後ろの人を気にしてしまう」という話や、「入院中メイクに目覚めたので、退院してから(車いす用の)ドレッサーを買いに行ったんですけど、日本のお店では、ちょうどいいサイズが無かった」などの会話を楽しんでいた。

 さらに猪狩は「周りからの私の印象が“ポジティブで前向きな子”って固まってきている気がするので、マイナスなことは絶対に出さないようにしようと思っています」とポツリ。「でも、この前、劇場に行った時、私のいない仮面女子のパフォーマンスを見学して『もうああいう風に踊ったり出来ないんだ』『足を上げたりするパフォーマンスは出来ないんだ』と複雑な気持ちになったのも確かです」と正直な思いも吐露した。

 また「お仕事の時や、友達と会っている時はニコニコしているけど、うちに帰ると“素”が出てしまうというか、イライラして親に当たってしまって。後でその自分が嫌になってしまって…。悪循環というか」と車いすの先輩に、普段出来ないであろう自身の不安や悩みを本音で打ち明けていた。

 猪狩は最後に「車いすユーザーとしては赤ちゃんみたいなものなので、もっとお話を聞きたいです」と中嶋との再会を希望した。

 「車いす女子」の2人の出会いは、日本のエンターテイメント界にどのような作用をもたらすのだろうか。エンタメ界だけでなく、私を含めた障がい者の中でも、この出会いはとても好意的に受け止められている。

 今回のことでさらに障がい者への注目や理解が進み、日本社会のバリアフリー化が進んでくれることを願う。仮面女子とCo―Co Lifeタレント部の合同イベントなども面白いのではないだろうか。(記者コラム・松岡 岳大)

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