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「ジャーナリスト・有働由美子」の考え方、本音をもっと聞きたい

2018年10月12日16時0分  スポーツ報知
  • 有働由美子アナウンサー

 今年3月末にNHKを退局した有働由美子アナウンサーを新たにメインキャスターとして迎えた日本テレビ系報道番組「news zero」がスタートして約2週間。平均視聴率8%前後を推移し、上々の船出となった。

 初出演した1日の放送では、驚かされた。冒頭のあいさつを言い間違え、番組途中のCM直前では進行を忘れてしまい「次、何でしたっけ?」とカメラを凝視し、一瞬止まってしまったのだ。

 27年間勤めたNHKでは、「ニュース10」を4年、「あさイチ」を8年、紅白歌合戦などを含め、あらゆるジャンルの司会を担当。生放送にめっぽう強いはずの有働アナが、これだけ焦る場面を初めて見た。

 振り返れば、突然の退局だった。明らかになったのは、有働アナがNHKを去った3日後のこと。4月3日夜に、同局を通じ、報道各社にファックスで報告。そこには「海外での現場取材や興味ある分野の勉強を自分のペースでしたい」と記されていた。NHK幹部候補と目されていた国民的アナウンサーが目指したのは、「ジャーナリスト」。49歳の決断だった。

 あれから半年。報道番組にどんなスタイルで戻ってくるのか、注目していた。画面に現れたのは「ジャーナリスト」というイメージより、元気で明るい“そのままの有働さん”だった。

 番組は、スタジオの大型円形モニター以外にも随所に変化を伺わせた。日替わりゲストは、個性的な面々がずらり。下駄を履いて初登場した筑波大・落合陽一准教授、義足モデルのGIMICO(ぎみこ)さん、トランスジェンダーであることを告白した日本テレビ「金曜ロードSHOW!」の谷生俊美プロデューサーらが、有働アナの隣で持論を展開した。

 “女性の視点”も印象的だ。4日に放送された大阪・富田林署から48日間逃走した樋田淳也容疑者に関する続報で、有働アナは「その大胆不敵な逃走劇が注目されがちですが、一人の女性としては怖い。この容疑者、性犯罪で逮捕されているのです。その視点を忘れずに伝えて行きたい」と述べた。

 さらに「視聴者と会話するニュース」というコンセプトの元、SNSで視聴者からのコメントを募集する企画をスタート。テレビ離れが指摘される若者の関心を引きたい狙いもあるのだろう。情報番組で用いる手法を、報道番組に取り入れた形だ。

 気になったのは、有働アナが発したひと言だ。「世の中いろいろ動いていて、何が正しいのか、どういう価値観でニュースを見ていったらいいのか、正直自信がありません」とした上で、視聴者との会話を呼びかけた。正直さは伝わるが、「ジャーナリスト」が“自信がないから、一緒に考えましょう”というスタンスには違和感を覚えた。

 そもそも有働アナにとって「ジャーナリスト」とは何なのか。答えの一端は、9月28日付本紙のインタビューにある。「戦地に行ったりスクープネタを取って、危険な取材をして、はじめてジャーナリストと言えるというのは古い価値観のような気がして。私にとっては『あさイチ』でセックスレスやワキ汗に悩んでる方、離婚についての座談会―。そういう取材もジャーナリストとしてやっているつもりだった」と語っていた。

 大小問わず社会的な関心を呼ぶ話題に向き合おうとする姿勢に共感する。半年の充電期間には、取材のために各地に赴いたと聞いた。報道番組はVTRが長く、キャスターが個人的な見解を述べる時間は短い。それでも、この2週間足らずで、有働アナの人間味はよく伝わった。わずかな時間でいい、今度は「ジャーナリスト・有働由美子」のものの見方や本音を深く聞きたい。(記者コラム・江畑 康二郎)

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