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聞きたかった大杉漣さんの「遺作3部作」への想い

2018年10月19日16時0分  スポーツ報知
  • 大杉漣さんの主演映画「教誨師」のポスター

 今年2月に急性心不全のため死去した俳優・大杉漣さん(享年66)の最後の主演作で、初めてプロデュースを手がけた映画「教誨師(きょうかいし)」(公開中、佐向大監督)をこのほど東京・有楽町のスバル座で鑑賞した。

 教誨師とは受刑者に刑を受け入れ、自ら犯した罪を悔い改め、改心するよう教え諭す牧師のこと。大杉さんが演じる教誨師の主人公が拘置所に通い、6人の死刑囚と対話を重ねていく上で、彼らが心安らかに死ねるように導くのが本当に正しいことなのか苦悩、葛藤し、自らの人生にも向き合うことになる。

 6人の死刑囚は、気がいいヤクザの組長(光石研)を始め、主人公の問いに一切応えようとしない男(古舘寛治)、年老いたホームレス(五頭岳夫)、おしゃべりですぐ怒る関西出身の中年女性(烏丸せつこ)、面会にも来ない我が子を思い続ける気弱な中年男性(小川登)。大量殺人者の若者(玉置玲央)。シーンのほとんどが拘置所の面会室で、6人の死刑囚との会話で成り立っており、淡々としているようで、緊迫感あふれる舞台を見ているように感じた。

 テレビ東京系「バイプレーヤーズ」で共演した光石は、初日舞台あいさつで、番組収録中に大杉さんから「今度、映画撮るから出てよ」と出演依頼を受け、台本を見る前に承諾したことを明かしていた。どこか不器用で愚直な牧師を熱演した大杉さんの演技はもちろんだが、6人の死刑囚それぞれの存在感も圧巻。名脇役として活躍した大杉さんならではの人選なのだろう。

 多少ネタバレになってしまうが、劇中、死刑囚から生きる意味を問われた主人公が「意味なんかない。生きているから、生きる」と答えるシーンがある。亡くなってしまった大杉さんを思うと、余計に深く心に響いた。佐向監督は初日あいさつで、3年前に今作を始動したことに触れ「大杉さんは『僕の遺作にする。遺作3部作に』と言ってくれていた」と明かした。大杉さんがなぜ、死と真正面から向き合う作品を手がけようとしたのか。残りの2作はどのような構想だったのか―。いくら知りたくても、もう話を聞くことはかなわないのが残念で仕方がない。

 実は、公開中の作品の劇場の様子を伝え、価格で採点する人気コーナー「シネマ捜査」のために見に行ったのだが、この作品を価格で評価していいのだろうかと悩んでやめた。鑑賞した17日、午前11時の回はレディースデーとあってか100人以上の観客がいたが、50~60代と思われる人がほとんどだった。ぜひ、若い方にも足を運んで欲しい。(記者コラム)

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