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河瀬直美監督が描く“リアリティー”…「単なる記録映画ではない」東京五輪公式映画に期待

2018年10月26日16時0分  スポーツ報知
  • 河瀬直美監督

 先日、2020年の東京五輪の公式映画を河瀬直美監督(49)が担当することが発表された。私としては「驚いた」というのが率直な感想だった。

 カンヌ国際映画祭の常連として、また最近亡くなった樹木希林さんが主演した15年の映画「あん」の監督として知られているが、映画ファン以外にはあまりなじみはないかもしれない。ただ、1964年大会の市川崑監督の「東京オリンピック」を振り返り、組織委員会が「単なる記録映画ではなく、今の日本を描き、世界に発信する」ということを狙いとしているのであれば、河瀬監督の起用はうなずけるところもある。

 河瀬監督の作品を表す時には「芸術性」という言葉がよく使われる。確かに、光の使い方やカメラワークには特徴があるのかもしれない。だが、同時に河瀬監督の作品には俳優らが演じる登場人物が生きている場所にリアリティーを持たせようという意識が強いと思う。街に住む人々に“演技”をさせず、そこで生活している姿をそのまま切り取った様子が、スクリーンには映し出されている。

 大会の公式映画だから「主役」は選手たちであることは間違いないが、ただ競技をひたすら追い求めるのであれば、スポーツ中継と何ら変わりない。その選手を支えるコーチや家族、関係者ら、応援する観客の気持ちなどが表れて、初めて「2020年に東京で行われた五輪は、こんなだったのか」と後世の人たちが知ることができるのだと思う。私自身、市川監督の「東京―」でも、記憶に残っているのは国立競技場の観客の様子や、競技の合間に選手が見せる表情など「人間らしさ」が出ているシーンだ。

 「東京―」に撮影助手として参加した、タレントとしても知られる山本晋也監督(79)に3年半ほど前、「2020年の五輪映画を誰に撮ってもらいたいか?」と聞いたことがある。その時、山本監督は山田洋次監督(87)の名前を挙げ、「日本人をどう描けばいいのかを知っている監督ですから。それに、僕はそういう路線の作品を見たい。記録だけでいいのなら、NHKの映像を編集すればいいんじゃないかな」と話していた。

 これまで小規模で作品を作り続けて来た河瀬監督にとっては、「超大作」のメガホンを執ることに様々な苦労もあることだろう。それでも、組織委の「そういう路線」の期待にぜひ、応えてもらいたい。(記者コラム・高柳 哲人)

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