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今が旬!MC初挑戦の佐藤二朗、最大の魅力はナチュラルな大人の気配り

2018年11月10日11時0分  スポーツ報知
  • 5時間に及んだ収録直後にも関わらず初MCを務めるクイズ番組「99人の壁」について熱く語る佐藤二朗
  • 初MCを務めるクイズ番組「99人の壁」の決めポーズをする佐藤二朗

 取材対象と1対1。マンツーマンのインタビューで、これほど自然に、さりげなく気を使われたのは初めての経験だった。

 10月下旬、東京・台場のフジテレビ湾岸スタジオ。俳優・佐藤二朗(49)が初めてMCを務める同局系新クイズバラエティー「超逆境クイズバトル!! 99人の壁」(土曜・後7時)の収録現場に押しかけた。

 100人の参加者の中から選ばれた1人が自分が得意なジャンルでクイズに挑戦。四方を囲んだ残り99人を相手に早押し形式で対戦するという全く新しい形式のクイズバラエティー。格闘技場を模したセットの真ん中でまさに四面楚歌の状態で難問に挑むチャレンジャーの隣に優しく寄り添いつつも、当の素人さん以上に汗びっしょりになり、頻繁にカンペを要求。常にテンパりながら、なんとか番組を進行しようと悪戦苦闘していたのが佐藤だった。

 この日は一般公募で選ばれた23人の出場者に加え、将棋の加藤一二三九段とマジシャンのMrマリックが5問連続正解での賞金100万円に挑戦。総勢25人が難問に挑んだとあって、午後3時に始まった収録が終わった時、時計の針は午後8時を回っていた。

 その後、スタッフを集めての反省会を終えた佐藤が、私が待ち受ける会議室にクイズコロシアム主宰者を模した派手な衣装のまま、汗をふきふき現れたのは、午後9時頃だった。

 「25人の挑戦者たちを面白おかしくイジり、番組を進行させるのは本当に疲れるだろうな」―。そう思ったから「長時間の収録直後のインタビュー、すみません」と、まず謝った。

 すると、実は181センチと長身の俳優は「いえいえ、むしろお待たせしてすみませんでした」と頭を下げると、「あれっ、なぜ、こんなに微妙に離れているんですか?」と、インタビュー用に用意された机が約1メートル離れていることに気づき、自らの机を前へと移動させ始めた。

 用意された時間は30分間。「疲れました。毎回、ぐったり疲れますね…」とつぶやく佐藤に容赦なく質問をぶつけた。「僕は精神年齢が8歳。そのままの自分で主宰者を演じるつもりでやっています」「ゲストでいらっしゃった柴田理恵さんに休憩中に『最高! 素人、丸出しで』って言われました」「嫁には『こんなこと言ったら悪いけど、長く続く番組じゃないと思うから、与えられた期間を全力でやりな』って言われました」などなど、そのまま見出しに取れるキャッチーな言葉が次々と飛び出した。

 口にする言葉の魅力以上に驚かされたのが、冒頭に名刺を渡しただけの私の名前を「中村さんは、そうおっしゃいますが…」などなど、インタビュー中に普通に口にしたこと。これまで様々な俳優、映画監督、スポーツ選手たちの話を聞いてきた。自分のことを初々しい記者とは全く思っていないが、初対面でこれだけ一個人として尊重されているのを感じながらやり取りする経験は初めてだった。

 インタビュー終盤、収録の序盤で佐藤が口にした「誤答が多いですねえ。ゴトウクミコ!」という“渾身のオヤジギャグ”について聞こうとした際、その言葉自体をど忘れしてしまった。慌てて、収録の様子をメモしたノートのページをめくる私に佐藤は全く自然に、こう声をかけた。

 「間が空いても大丈夫ですから」―。そう、記者が一番恐れるのが、沈黙によって妙な間が空き、うまく運んでいたインタビューのリズムが崩れること。取材者心理までつかんでいる俳優に「そう、ゴトウクミコってギャグは…」と聞くと、「出ました!」と絶叫。「ギャグと言わないで下さい。恥ずかしいから」と四方で見守る制作、広報スタッフたちを爆笑させた。

 わずか30分間の取材だったが、佐藤とのやり取りで感じ取ったのは、決して偉ぶらない大人の優しさと気配り。それは26歳で広告代理店に就職し、営業マンとして部署トップの成績を残した社会人経験で身につけたものかも知れない。

 福田雄一氏や堤幸彦氏らの作品常連の人気者の上、ツイッターのフォロワー数も104万人を誇る。つい先日も「佐藤二朗がイケメンなら世の6割がイケメン」というSNSの失礼な投稿に本人が「失礼にも程がある、どなたかに言いたい。6割ではない、9割だ!」と“謙虚過ぎる”反論。直後に「二朗さんはカッコイイ」「私は好きです」「二朗さんはハート、面白さがイケメンです」などのファンのコメントが殺到して話題を呼んだ。

 「MCとか司会者というより主宰者を演じるつもりで。『主宰・佐藤二朗』として演じているつもりでやっております」と言う人気俳優は、この日の収録でも9歳の子供から78歳の加藤九段まで出場者1人1人と時には友達のように、時には父親のように接し、自然とリラックスさせた。そこには、じんわりと人柄の良さがにじみ出ていた。

 俳優としても近年、出演作ラッシュ。49歳で初のミュージカルにも挑戦と多忙を極め、まさに旬の時を迎えている。そして今回、大きな覚悟のもと挑んだ初MC番組でも着実に評価を上げつつある。

 プロデューサーとして「王様のレストラン」「古畑任三郎」など数々の大ヒット作を生み出してきたフジテレビ編成の最高責任者・石原隆取締役は、そのMCぶりを見て、こう言った。「佐藤さんのMC初挑戦は司会を演じるイメージ。番組は全く違いますが、『料理の鉄人』の鹿賀丈史さんが主宰をやったように劇的な空間の中で役者さんが主宰をされるという、とてもいい感じを覚えました」。

 そう、この「とてもいい感じ」という言葉こそ、佐藤二朗という人物を語るキーワードだ。フジが10月改編の目玉として送り出した全く新しいクイズ番組は、一見の記者にまで自然な気配りをする「とてもいい感じ」の俳優のもと、今日もじわじわと成長を続けている。(記者コラム・中村 健吾)

 ◆佐藤 二朗(さとう・じろう) 1969年5月7日 愛知・春日井市生まれ。49歳。4歳から愛知郡東郷町で育つ。信州大経済学部卒業後、リクルートに入社も1日で退職して帰郷。広告代理店に務めつつ、96年、演劇ユニット「ちからわざ」を旗揚げ。全公演で作、出演を担当するなど、俳優活動を開始。劇団「自転車キンクリート」に入団し、広告代理店を退職。08年、「拝啓トリュフォー様」で地上波ドラマ初主演後、多数のドラマ、映画に出演する人気俳優に。「ケータイ刑事銭形シリーズ」「恋する日曜日」「家族八景」などのドラマ脚本を執筆。映画「memo」(08年)では脚本・監督も務めた。

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