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元アメフト日本一俳優・田谷野亮が感じる日大アメフト部の変化と演劇との共通点

2018年11月20日16時0分  スポーツ報知
  • アメフト日本一の経歴を持つ俳優・田谷野亮
  • 現役時代の田谷野亮
  • 17日の社会人合同チームとの練習試合で笑顔を見せた日大フェニックス・宮川泰介(中央)

 17日、横浜スタジアムで日本大学アメリカンフットボール部が処分後初となる練習試合を行った。悪質なタックルを行ったことで一時は競技から身を引く宣言をした宮川泰介選手(20)は試合にこそ出場しなかったものの、ユニホーム姿で自陣から選手を鼓舞。アメフトを愛する関係者、ファンを安堵させた。俳優・田谷野亮(32)もその一人だ。

 「何より選手が笑顔を見せていたことに驚きました。今まで日大のイメージになかったので」―。11年、Xリーグ・オービックシーガルズの一員としてアメフト日本一を決するライスボウルを制し、早大米式蹴球部在籍時には日大としのぎを削り合った田谷野にとって、日大の再始動には特別な思いがある。

 「僕が思い描くリーダー論を体現しているような人」だと新指揮官・橋詰功監督(55)に目を向ける。高校3年時に専門誌「タッチダウン」が選出する日本代表に相当するトップイレブンに選出されるほどの注目選手だった田谷野。当時、立命大コーチの橋詰氏が熱心な勧誘を行ったことがきっかけで今でも付き合いがある。

 「(勧誘を断って)他校に進学した僕のことも気にかけてくれるし、実際に立命大に進学した同級生からは普段の指導が丁寧なのはもちろん、(部活管轄外の)試験勉強に夜遅くまで付き合ってくれたと聞きました。人のことをよく見て指針を示してくれるリーダーなんだと思います」。

 田谷野も現在、演劇集団「たやのりょう一座」の座長としてリーダーの横顔を持っている。個性的な役者を短い稽古期間で束ねるのは至難の業だが「やはりアメフト時代の経験が活きています」と言葉に力を込める。早大4年時は米式蹴球部副将を務め、100人以上いる部員を幹部として率いた。

 「当然ですが、皆、考えていることや性格は違う。頭ごなしに言っても全員に響きません。大げさでなく24時間、彼らをどうやって一つの方向に向かせられるのか考えている感覚でした」。考え抜いたその先には、ある境地が待っていた。

 「最終的には練習場に入ると、空気感で誰が何を考えているか感じられるようになりました」。部員をよく観察し、真摯に向き合うことで余裕をもって全体が見渡せるようになっていった。そんな頃、父からはこんな言葉を掛けられたという。「皆に夢を見させて、それを叶えてあげるのがリーダーなんやで」。田谷野の目指すリーダー像は徐々に固まっていった。

 「アメフトも演劇もチームワークでレベルの高いものを目指すことに変わりはありません。リーダーとしてメンバーが考えていることを聞いてあげる、その上で一つのものを目指す方法を常に探っています」。チームワークを何よりも大切にする田谷野の公演は観劇者によるアンケートにも顕著に表れ、役者の一体感を好評する意見が多く寄せられているという。「やっぱり伝わるんや、と自信になっています」。

 アメフトで培ったチームビルドが演劇に応用できたからこそ感じる。「アメフト現役の時、日大は高い技術を持っていたけど“やらされている”からその分付け込む隙もあると感じていました。あのチームが橋詰監督のリーダーシップで自主性と一体感が出たらものすごく強くなると思います。復帰した宮川選手はその象徴。日本を代表するフットボウラーになってほしいですね」

 自身は11年、ライスボウルで日本一になった年に怪我で競技人生を諦め、引退せざるを得なかった。再スタートを切ることが出来た日大フェニックスをうらやましく思う気持ちも少しあったのかもしれない。しかし、首を横に振る。「僕はアメフトのように人生をかけられる演劇というものに出会えましたから」

 19年3月からは「たやのりょう一座」第3回公演として浅草木馬亭でつかこうへいの名作「蒲田行進曲」を中村静香(30)とのW主演で上演する。「チームワークを大切にして一座にしかできない勢いのある演技をしていきたいですね」。再スタートを切った日大に負けない活躍を見せるつもりだ。(記者コラム 写真部・酒井悠一)

 ◆田谷野亮(たやの・りょう) 1986年9月18日、大阪府生まれ。11歳からアメフトを始める。関西大倉高、早大を経て社会人Xリーグ・オービックシーガルズで日本一を経験。怪我で引退後、12年、仮面ライダーウィザードで俳優デビュー。16年、たやのりょう一座を創設し、膨大な台詞量で知られるつかこうへい作品に挑む。175センチ、64キロ。A型

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