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ラジオ局がテレビCMを放送する時代…生き残りをかけた他メディアとの融合を見た!

2018年12月8日11時0分  スポーツ報知
  • HBCラジオ「冬の大感謝週間」のテレビCMに出演した「気分上昇ワイドナルミッツ!!!」の水野よしまさアナ(左)と森結有花アナ

 それは何十年も前のこと。ビートたけし(71)の機関銃のように繰り出すトークを一言も聞き漏らしてはならない―。そんな思いで週に1回、真夜中にラジオにかじりついた。その上でカセットテープに録音、友人と再度、腹を抱えて爆笑したのは1981年から90年にニッポン放送で放送された「ビートたけしのオールナイトニッポン」だった。

 私にとって、笑いの感覚そのものを養ってくれたと言えるラジオ業界が今、大ピンチだ。驚かされたのは、11月28日に東京・赤坂のTBSで行われた定例社長会見の場だった。

 いつもどおり、佐々木卓社長の隣に座ったTBSラジオ・三村孝成社長の口から驚くべき一言が飛び出した。12月から2か月に1度行われてきた聴取率聴取週間について「スペシャルウィーク」という呼称をやめ、局全体としては特別な編成やプレゼント企画を行わないことを発表した上で「25年ぐらいラジオの放送収入は下がり続けている」とポツリ。業界全体が長期間に渡って危機的状況にあることを明かしたのだ。

 テレビの視聴率にあたる聴取率を日々、測定してはいないラジオ。2か月に1度、1週間を対象にし、各時間帯でどの番組を聴いていたかというアンケートを実施して算出された数字が聴取率。この数字が番組編成や営業活動の参考となってきた。

 TBSラジオは2001年8月から聴取率トップに君臨してきたが、2010年に大手広告代理店と民放ラジオ局が立ち上げたネットでラジオ放送を聴けるサービス「radiko(ラジコ)」が一気に普及。この「radiko」を通じての聴取者数はリアルタイムに局側が実数を把握できるという。それゆえの「スペシャルウィーク」消滅だが、私が驚いたのは、業界トップの同局でさえ、「四半世紀に渡って放送収入が下がり続けている」というラジオの置かれた状況だった。

 ラジオメディアを取り巻く環境は本当に厳しい。総務省の調査によると、平日1日当たりの各メディアの平均利用時間は、テレビのリアルタイム視聴が159・4分、インターネットが100・4分なのに対し、ラジオはわずか10・6分。経営面でも全国の民放ラジオ局(コミュニティFMを除く)の2017年度の当期損益は100社中22社が赤字だという。赤字局はすべてラジオ単営社。ラテ兼営社33社はすべて黒字。いまやラジオは、テレビとの共存無しでは経営が立ち行かなくなりつつある。

 一方でスマートフォンやパソコンでラジオが聴ける無料サービス「radiko」の現在の日間ユニークユーザー数は120万人超。今年7月には新たな広告商品「ラジコオーディオアド」の実証実験もスタート。これまでの地上波ラジオ放送の広告とは異なり、ラジコのリスナーの年代や性別などの属性にあわせて配信する広告を変えるという形。地上波テレビの広告がまだ踏み込めていない領域で、これによりラジオの媒体価値を高めようとしている。こちらはラジオがインターネットと融合することで活路を見出している好例だ。

 そんな大ピンチの中、ある地方ラジオ局が制作した自局PRのテレビCMが話題を呼んでいる。北海道放送ラジオ局(HBCラジオ)が作った「1分でわかるHBCラジオ冬の大感謝週間」という60秒のCM。10日からスタートのリスナー週間を紹介する内容だが、その中身はこうだ。

 マスターが一人で営むバーに、ワケありの女性客がやって来る。カウンターで今年1年のツイていなかった出来事を思い出して、ふさぎ込むが、HBCラジオに出会って、前向きな気持ちを取り戻すというもの。どちらの役も同局の局アナが演じている。

 「これまで通常の15秒のテレビCMを作ったことはあるが、60秒もの長尺CMを制作したのは初めて」とHBCラジオの担当者は言う。

 「ラジオ局がテレビを使ってPR」をする時代。もはや、ラジオは他メディアとの融合なしでは立ち行かない“ガラパゴス的メディア”なのか。いや、違う。今回のテレビCMについて、HBCラジオの担当者は「今回は、キャンペーンのスキーム(計画)を分かりやすく説明するために動画CMを制作した。決してテレビCMありきで制作したものでなく、インターネットやSNSなどにも配信していて、こちらも比較的良いレスポンスを得ている。少なくとも『ラジオのPRはラジオで』という考えではなく、様々な媒体を用いて広がりを持たせることが大事だと思う。テレビやインターネット、時には新聞なども使って効果的なラジオのPRに努めたい」と目を輝かせた。

 そう、このサバイバルへの気合こそがすべてだろう。テレビ、インターネット、そして、新聞。様々な媒体を駆使しつつ利用する―。そんな生き残りをかけたラジオの巻き返しが今、北の大地から始まっている。(記者コラム・中村 健吾)

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