RENAは“黒のカリスマ”蝶野正洋になれるか…金曜8時のプロレスコラム

スポーツ報知
黒いコスチュームで登場したRENA。セコンドは「nRo」Tシャツを着ている(C)RIZIN FF

 7月29日に行われた総合格闘技イベント「RIZIN.11」(さいたまスーパーアリーナ)で、場内のプロレスファンがドッと沸いたのが、メインイベントの入場シーンだった。RIZIN初の女子によるメインイベント、女子スーパーアトム級GP王者の浅倉カンナ(20)=パラエストラ松戸=と“ツヨカワクイーン”RENA(27)=シーザージム=のリマッチ(女子MMAルール49・0キロ)だ。最初に入場したRENAの入場曲イントロに私も驚いた。

 フジテレビの生中継が始まっていた。時刻は午後8時59分。“9時またぎ”のゴールデンタイムだ。今や代名詞にもなった入場テーマ「絶対負けない!」(エイジアエンジニア)を期待していた観衆は驚かされる。そこに流れたのは“黒のカリスマ”蝶野正洋(54)の「CRASH」(ロイヤル・ハント)だった。

 黒いガウンコートを着たRENAが凛として立っていた。この時、テレビでは「美しすぎる最強女子RENA登場」というテロップが出ている。妖艶な表情で、ステージから階段を下りていくタイミングで曲が「絶対負けない!」に切り替わり、笑顔を見せて、いつもの振り付けで明るい入場シーンを演じた。

 RENAの“ヒールターン”(悪役転向)は必然だった。昨年大みそかの「RIZIN 女子スーパーアトム級トーナメント決勝」(さいたまスーパーアリーナ)で、浅倉カンナのチョークスリーパーで失神KO負け。続く「RIZIN.10」(5月6日・マリンメッセ福岡)でカンナの勝利後にRENAはリングインして、再戦をアピールしたが、ここから批判の声が急増した。フジテレビの“RENA絶対ヒロイン”路線への反発もあっただろう。

 浅倉陣営、そして大会実行委員会から「実績を積んでから」との声が上がり、RENAは7月6日の「SHOOT BOXING Girls S―cup(東京ドームシティホール)で、エレイン“パンテラ”リアル(29)=ブラジル=とのMMA(総合格闘技)マッチを強行。これまでの赤ではなく、黒いコスチューム姿で判定勝ちしたRENAはバックステージでこうもらした。「心機一転、世間的にちょっとヒールになったんで。黒いRENAを見せようかなと」

 その答えが蝶野であり、試合での殺気だった。カンナとの再戦は、タックルで倒されても、ヒジやカカトを遠慮無く頭部にたたき込み、カンナに腕を伸ばされそうになるとパワーボムのようにマットにたたきつけて関節地獄から逃れた。結果は判定負けだったが、カンナは「RENAさんの怖さがハンパなくて、怖くて怖くてしょうがなかったです」と語っている。

 カンナに連敗後、RENAは「今はいったん格闘技から離れようかな。1回普通の女性に戻りたい」と休養宣言した。とりあえず待つとして、もしここでフェードアウトしたら、アンチがさみしがるに違いない。nWoジャパン、TEAM2000でヒール人気をブレークさせた蝶野の“黒のカリスマ”は、松田優作さんの遺作「ブラック・レイン」(1989年公開)がモチーフになっている。映画の舞台になった大阪で生まれ育ったRENAこそ、それを継承するにふさわしいと思うが、どうだろうか。(酒井 隆之)

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