引退した小橋建太氏のチョップを引き出した鈴木みのるのプロレス力…金曜8時のプロレスコラム

スポーツ報知
鈴木みのるが場外乱闘で解説の小橋建太氏からチョップを受ける(カメラ・竜田 卓)

 リング上の事故で、頸髄完全損傷を負い長期入院生活を送っている高山善廣(51)を支援する「TAKAYAMANIA EMPIRE」が8月31日に東京・後楽園ホールで開催された。高山の奇跡の来場を期待してみたが、さすがにそこまではいかず、鈴木みのる(50)=パンクラスMISSION=がフル回転の活躍で盛り上げた。

 高山は昨年5月4日のDDT大阪・豊中大会で前方回転エビ固めを仕掛けようとして頭からマットに落下。首から下が動かない頸髄完全損傷と診断され、長期入院生活を余儀なくされている。

 イベントには「ノーフィアー」で高山の相棒だった大森隆男(49)=全日本プロレス=、秋山準(48)=全日本プロレス=、永田裕志(50)=新日本プロレス=、天山広吉(47)=新日本プロレス=、丸藤正道(38)=プロレスリング・ノア=、里村明衣子(38)=センダイガールズ=ら16団体から37選手が友情参戦し、前田日明氏(59)、山崎一夫氏(56)、桜庭和志(49)、元阪神投手の下柳剛氏(50)、タレントの山田邦子(58)らが駆け付けた。

 メインイベントは、IWGPタッグ王者時代にパートナーだった鈴木みのるが、NOSAWA論外(41)、MAZADA(43)と組んで、太陽ケア(42)、TAKAみちのく(44)、近藤修司(40)と6人タッグマッチを戦った。

 場外乱闘になると、鈴木は解説席にいた佐々木健介氏(52)、小橋建太氏(51)を挑発した。すでに引退しているため遠慮して乗ってこない2人を見て、TAKAが鈴木を羽交い締めにして、チョップを要求した。苦笑しながらケンスケが1発、そして笑顔をはじけさせたコバシは3連発で逆水平チョップを鈴木の胸板に見舞った。こんなにはじけた小橋氏を久しぶりに見た。引退している2人からチョップを食らうシチュエーションを自ら作って最大の盛り上がりシーンを演出してみせた鈴木。鈴木軍のTAKAが敵軍にいた意味がわかった。鈴木は、リングに戻っても「俺が主役」で、ゴッチ式パイルドライバーでTAKAを仕留めてみせた(20分51秒、体固め)。

 マイクアピールを期待する観衆を静めて、大型ビジョンに注目させると、病室の高山からビデオメッセージが。手術でのどを切開したため、発声時に空気が漏れて聞き取りにくく、字幕付きだった。「厚いご支援をいただいて、この場を借りてお礼を申し上げます。次回どうなるかわかりませんが、足で蹴る感覚がちょっと出てきたのが分かりましたので、悪さばかりをしている鈴木みのるの顔面をビッグブーツできるのを僕自身も楽しみにしています。それまで、鈴木みのる、待ってろよ! みんな、ありがとう! また会おう!」とコメントを絞り出した。

 リングでマイクをつかんだ鈴木は「こいつ、寝てばっかのくせに、俺に喧嘩売りやがった。ああ、そうかい。いつまで寝てるんだ高山。俺は、お前がここに上がってくるまで、プロレス界の王の座で待ってる。そんなとこでくたばんじゃねぇぞ。てめぇのとどめは俺が刺してやる」と言い放った。こんな思い切ったセリフ、鈴木みのるにしか言えない。

 最後は超満員札止め1500人の観衆が総立ちになって「高山に届け! ノーフィアー!」と帝王の決めポーズで締めた。すると鈴木はリングから会場出口に直行し、募金箱を持って観客の渦の中に入っていった。募金箱には、この日だけで何と103万1728円が集まったという。こんなプロレスラー、鈴木みのるしかいない。(酒井 隆之)

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