前田日明氏と高田延彦氏がリングで遭遇する日は来るのか…金曜8時のプロレスコラム

スポーツ報知
リングでマイクを握る前田日明氏(カメラ・竜田 卓)

 リング上の事故で、頸髄完全損傷を負い入院している高山善廣(51)を支援する「TAKAYAMANIA EMPIRE」(8月31日・東京・後楽園ホール)のネタは、これで4週連続になるが、このイベントが1度だけの打ち上げ花火で終わってほしくないから…というよりも、このイベントはネタの宝庫だったので今週も書かせてもらう。

 高山は昨年5月4日のDDT大阪・豊中大会で前方回転エビ固めを仕掛けようとして頭からマットに落下。首から下が動かない頸髄完全損傷と診断され、長期入院生活を余儀なくされている。そんな高山を励ますために、盟友・鈴木みのる(50)=パンクラスMISSION=ら16団体から37選手が友情参戦し、ゲストも多数来場した。

 最大の焦点は、高山の師匠格である高田延彦氏(56)は来るだろうかということだった。

 悪性リンパ腫で闘病中の垣原賢人(46)が一時的にリング復帰する「カッキーライド」(8月14日・後楽園ホール)が今回の「TAKAYAMANIA EMPIRE」のモデルケースとなったが、この“UWF同窓会”とも言うべき大会で、元UWFの山崎一夫氏(56)が「独り言」と断った上で言い放った。「昨年は前田日明さんも会場に来ていただきました。まだいらしてない方がいる。もうそろそろいいんじゃないかな。TAKAYAMANIAもあります。出てこいや!」高田延彦氏(56)の決めゼリフで高田氏の来場を訴えた。高山と垣原のUWFインターナショナルの師匠だ。

 そんな伏線を取材してから迎えた「TAKAYAMANIA EMPIRE」。ビデオメッセージが流れるコーナーで、スタン・ハンセン氏(69)、天龍源一郎氏(68)らに続いて、高田氏がビジョンに映し出された。「あー」「来ないんだ」と会場はざわついた。高田氏は「高山善廣が1日も早く、最愛の息子をあのでっかい体でハグできる日を待ちわびながら、私もみなさんと一緒に微力ではありますが、応援を続けていきたいと思ってます。私から彼への個人的なメッセージは、彼と直接会って私の思いのたけをたっぷりと直接伝えたいと思います。高山善廣への熱い応援、支援、よろしくお願いします」と画面越しにファンに語った。高田氏がビデオメッセージのトリだった。

 間もなく「キャプチュード」のテーマが流れ、前田日明氏(59)が後楽園ホールの花道から入場してきた。高山はUWFインターナショナル入門前にUWFの入門テストに合格しており、最初の師匠は前田氏だった。マイクを持った前田氏のスピーチは感動的だった。

 「高山の頸椎損傷を聞いたときは本当に驚きました。彼は自分と同じで小っちゃい子どもがいたりして、本当に自分のことのように真っ暗になったりもしました。しかしですね、いろいろ調べてみると、脊髄損傷、頸椎損傷、世界にはそこから奇跡と呼ばれる復活を果たして、普通の生活に戻った人、結構いるんですよね。高山! プロレスラーの体はな、神経で動くんじゃないんだよ。魂で動くんだよ。お前も魂で体を動かせるようになって、このリングに戻って来い!」と熱く訴え、観衆から大喝采が起こった。

 やはりUWFの大将はいつまでたっても前田氏なのだ。そこから脱却するために、高田氏はUインターを旗揚げしたのだと思う。新日本プロレス時代の先輩・後輩の関係は、何年たっても逆転できるはずがない。前田氏がリングス時代に発掘したエメリヤーエンコ・ヒョードル(ロシア)が、高田氏のPRIIDEで大成したという、ビジネス上のわだかまりもあった。

 ふと思い出した。UWF分裂後に前田氏と高田氏が公の場で顔を合わせたのは、1991年の元関脇・益荒雄(現阿武松親方)の断髪式(引退相撲)だった。両国国技館でのことだ。「TAKAYAMANIA」が両国国技館でやるようなことになれば、そこで歴史的大団円が起きるかもしれない。そのリングには、高山善廣が立っていてほしい。(酒井 隆之)

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