空手&キックの女王・谷山佳菜子がボクシングデビュー「3年以内に世界チャンピオンに」…12月1日、大阪でデビュー戦

スポーツ報知
谷山佳菜子

 空手で世界一を極め、キックボクシングでも王者となった谷山佳菜子(31)=ワタナベ=が12月1日、エディオンアリーナ大阪でプロボクシングデビューを果たす。対戦相手は世界挑戦経験を持つスマリー・トンプートンで試合はバンタム級契約(53・5キロ以下)6回戦で行われる。

 谷山は熊本信愛女学院高1年だった2002年にK―1で活躍していた伝説の空手家アンディ・フグさんに憧れ空手の正道会館熊本支部(現・真正会熊本支部)に入門。2009年に極真世界女子空手道選手権の軽量級(55キロ以下)で世界一に輝き、翌年も連覇を果たすと10年にキックボクシングへ進出した。

 正道会館の大先輩でK―1グランプリで日本人唯一の準優勝に輝いた武蔵の指導や支えなど周囲のサポートを受けタイトルを獲得。キックでは19戦16勝3敗の戦績を残したが、16年秋に練習中に左膝の半月板を負傷し3度の手術を経験、医師からキックは難しいと宣告されてしまった。

 キックのリングでさらなる飛躍を期していた時のケガで「蹴りができなくなって最初は絶望していました。3回も手術して、もうできないのかなと思ったんですけど、自分はこのままで終わりたくなかったんです」と決意。パンチの練習でボクシングジムに通っており女子ボクサーとも親交があったことから「ボクシングだったらできる」とプロボクサーへの転身を決めた。

 キックでは大阪を拠点に練習していたが、選手層、練習環境などボクシングのメッカは、大阪よりも東京にあると上京を決意。武蔵と連続11回防衛の元WBA世界スーパーフェザー級王者の内山高志が親交を持っていたことから内山が所属していたワタナベボクシングジムを紹介され、5月にワタナベジムに入門。7月26日にキック時代の実績が考慮され、通常のC級ライセンスではなく6回戦でデビューできるB級ライセンスのプロテストを受検し合格し12月1日のデビューが決まった。

 格闘家としてリングで戦う谷山には、もうひとつの顔がある。それが看護師だ。「小さいころにマザー・テレサの伝記を読んで人の役に立つ仕事はスゴイと感動して、看護師にはずっと憧れていたんです」と高校卒業後に熊本医師会専門学校に進み准看護師の資格を取得した。卒業後には熊本市内の整形外科医院に就職し、勤務を終えた後に道場で空手の稽古を行った。その後、大阪に移った後も人工透析の病院に勤めながら空手とキックの練習に没頭、こうしたバックボーンからキック時代は「戦うナース」のキャッチフレーズで注目を集めた。

 ボクサーを志して上京した今も都内の乳腺外科「ナグモクリニック」に勤めている。現在、朝7時に起床し、午前9時半から午後3時まで病院で働き、その後、5時からジムワークと看護師の仕事と両立させ、新たな挑戦へ向かっている。

 試合まで1か月を切った今、「ワクワクしてます。やるんだっていう。しっかりやろうって思っています。3年以内に世界チャンピオンになりたい」と掲げた。

 指導する井上孝志トレーナーは「勝負勘と度胸、気の強さがいいですね。パンチ力もあります。空手仕込みの正拳突きみたいな真っすぐな右ストレートがいいです。このパンチは相手が見えにくいんです。デビュー戦の内容次第では、2戦、3戦すれば地域タイトルっていうところまでくるかもしれない」と期待する。

 空手時代から見守ってきた武蔵は「谷山の魅力は気の強さだと思います。とにかく気が強く普段の優しい顔とはまったく違う闘争心むき出しの表情で相手に向かって行きます。極真女子世界大会2連覇、キックでもチャンピオンなので強さは折り紙付きです。ボクシングはまた別競技で厳しい世界ですが空手で培った心と体で挑んで欲しいですね。デビュー戦ではお客さんの度肝を抜くようなインパクトを残して欲しいと思います。ボクもデビュー戦で人生が変わりましたから」とエールを送った。

 世界チャンピオンへ31歳からの挑戦。16歳で空手を始めチャレンジの連続だったこれまでだったが「これが最後の挑戦だと思っています。これから何かをやろうとか思わない。やりきろうと思っています」。拳に魂を込め新たなリングに歩を進める。

 ◆谷山 佳菜子(たにやま・かなこ)1986年12月7日、熊本県合志市生まれ。31歳。熊本信愛女学院高1年で正道会館熊本支部(現・真正会熊本支部)に入門。2008年、極真会館全日本女子空手道選手権軽量級(55キロ以下)優勝。09年、10年、極真会館世界女子空手道選手権軽量級優勝。10年12月にキックボクシングデビュー。11年にJ―GIRLS53キロJAPAN Queenトーナメント優勝。初代LEGEND QUEENバンタム級王者。16年にHOOST CUP初代バンタム級王者。キックの戦績は19戦16勝3敗。今年5月にボクシングのワタナベジムに入門し12月1日、ボクシングデビュー戦を行う。身長164センチ。右ボクサーファイター。

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