プロレス大賞授賞式に見る全日本VS新日本…金曜8時のプロレスコラム

スポーツ報知
「2018年度プロレス大賞授賞式」(前列左から)向田真優、須崎優衣、林下詩美、藤本つかさ、川井梨紗子、奥野春菜、(後列左から)乙黒拓斗、石川修司、諏訪魔、オカダ・カズチカ、棚橋弘至、ケニー・オメガ、丸藤正道、内藤哲也、清宮海斗

 「2018年度プロレス大賞授賞式」(東京スポーツ新聞社制定、スポーツ報知などが選考)が17日、都内のホテルで開かれ、選考委員の末席を汚す者として、出席させていただいた。

 授賞式では、最優秀選手賞(MVP)に選ばれたIWGPヘビー級王者・棚橋弘至(42)=新日本プロレス=ら受賞者が一堂に会した。棚橋への授賞時には、SKE48のメンバーで、2018年度「AKB48 53rdシングル 世界選抜総選挙」で1位に輝いた松井珠理奈(21)が、サプライズゲストとして登場した。

 珠理奈は、昨年度にテレビ朝日系で放送されたドラマ「豆腐プロレス」において、“ハリウッドJURINA”のリングネームで女子高生プロレスラー役を演じたことなどが評価され、プロレス大賞特別賞を受賞しており、これで2年連続の授賞式登場となった。

 そして、壇上で棚橋とプロレス愛を語り、そろってエアギターを弾いて、夢のセッションが実現した。それが今回のクライマックスであったことは間違いない。それこそ平成最後のプロレス大賞授賞式にふさわしい、名場面と言えるだろう。だが、私が記者になる前の、昭和のプロレス大賞授賞式は、そうではなかった。

 当時は、ジャイアント馬場(故人)の全日本プロレスとアントニオ猪木(現参院議員)の新日本プロレスが、年に1度だけ顔を合わせるという、とてもとてもピリピリした唯一の現場だった。東京スポーツ本紙はもちろん、「プロレス」(月刊から週刊)、「ゴング」(同)、「週刊ファイト」が、そのピリピリ感をこぞって伝え、読者は1年1度だけのそのリポートを楽しみにしたものだった。

 東京ドーム時代、そして他団体交流戦の時代になった平成は、そんな堅いこと抜きで楽しむことができていたが、今回の授賞式では、昭和の古き良きピリピリ感を呼び覚ますスピーチがあった。それは殊勲賞を受賞したプロレスリング・ノアの丸藤正道(39)によるものだった。全日本から派生したノアの丸藤は言ってのけた。「ここ数年のプロレス大賞MVPは、やはり新日本さんの独占が続いてますので、負けないようにしっかりがんばって評価してもらえるように最高の試合をしていきたいと思います」

 新日本の一人勝ちは許さないという、業界を代表する声でもあった。今回、唯一、全日本勢で受賞したのが、最優秀タッグチーム賞の暴走大巨人コンビ、諏訪魔(42)&石川修司(43)だった。このコンビは、2年連続での受賞となる。

 選考委員会が行われた昨年12月には、フリーだった石川が、年が明けて正式に全日本と所属契約を結び、壇上で「全日本プロレスの石川修司です」とあいさつした。諏訪魔は「2019年は暴走大巨人、総決算の年として、いろいろ騒がせていきたいと思います」と胸を張って言った。

 無骨な全日本代表に対して、新日本の受賞者であるMVPの棚橋、ベストバウトのケニー・オメガ(35)VSオカダ・カズチカ(31)、技能賞の内藤哲也(36)のスピーチは洗練された名ゼリフが続いた。どっちがいいかの判断は分かれるが、新日本のエンタメ性が優位だったことは間違いない。

 では身体ではどうだろう。集合写真を見ればわかる通り、身長のデカさでは、石川修司が抜きん出ている。新日本ではオカダも大きいが、この2人とそれ以外の選手が比べられることがないような絶妙な並び順になってもいた。だが、そんなデカさ論争をぶち壊す、最終ゲストが現れた。

 アンドレ・ザ・ジャイアントパンダの子連れ登場だ。東スポの平塚雅人記者(かつてのハッスル解説者)が「危険です! お下がりください!」「でも子パンダは安全です」と叫んでいたのには笑ったが、パンダのデカさは半端なかった。「絡みたくない」とばかりに、どんどん退席していくレスラーたち。その中で、満面の笑みで唯一絡んだのがMVPの棚橋だった。最後の最後に棚橋という男の人間の大きさを感じさせられた授賞式だった。(酒井 隆之)

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