【巨人】ゲレーロ、キューバの英雄キンデランから力もらったV2ラン

◆日本生命セ・パ交流戦 巨人3―1楽天(6日・東京ドーム)
打球の行方を確信した。ゲレーロは軽やかなサイドステップで打席を踏み出すと、バットを手離す前に右拳を突き上げた。高い放物線を描いた白球が、左翼席へ飛び込んだ。「自分としても久しぶりにいい当たり、チームとしても久しぶりの先制だと思う」。3試合ぶりの先取点をもたらすアーチに、悠々とダイヤモンドを一周した。
これこそ、主砲の働きだ。初回1死二塁。プロ初先発となった近藤のフルカウントからの8球目、真ん中へ入ってくるスライダーを捉えた。5試合ぶりの一発となる10号2ランは、移籍後初の決勝弾にもなった。「肩口からの変化球に自然と体が反応したね。大事な仕事ができたと思う」と納得の表情。10試合ぶりに座った3番の席でようやく“らしさ”を発揮した。一時は7番まで下がったが「自分は兵士。監督の命に従うのみです」と前を向いた。
憧れの存在から、パワーをもらった。5日の楽天戦開始前、観光のため来日していた元巨人で、キューバで現役を続けているセペダらキューバ出身の選手一団が東京Dを訪れたが、その中にオレステス・キンデラン氏(53)も同行していた。五輪に3度出場し、母国を2度の金メダルに導いた“キューバの英雄”だ。野球を始めた幼少期には「俺をキンデランと呼べ」と周囲に求めていたほどのアイドル。5月29日の日本ハム戦(東京D)で左翼席上部の看板を直撃する特大弾を放ったことを“自慢”するなど、試合前ミーティング開始まで時を忘れて会話を楽しんだ。「素晴らしい時間だった。ああいう人になりたいね」。2ショット写真を撮るなど満喫し、最後はがっちりと握手を交わして今後の健闘を誓った。
5回先頭でも三塁線を破る二塁打を放ち、14試合ぶりのマルチ安打をマーク。だが、3回無死一、三塁の場面ではどん詰まりの一飛に倒れるなど、期待される勝負強さにまだまだ達していないことは自覚している。「状態はまだ60%くらい。11号に届くのも大変かもしれないよ」と自虐的に笑った。この一発をきっかけに量産態勢に入る姿を、誰もが待ち望んでいる。(西村 茂展)
◆キンデラン 1964年11月1日、キューバ生まれ。53歳。キューバ国内リーグでプレーしたスラッガー。代表初選出となった92年バルセロナ五輪で金、96年アトランタ五輪も金、00年シドニー五輪も銀と、中軸打者として3大会連続メダル獲得に貢献した「キューバの英雄」。03年からは社会人野球・シダックスに所属。都市対抗野球では5試合で打率6割、4本塁打の活躍で外国人選手として初めて敢闘賞に当たる「久慈賞」を獲得。同じくシダックスに所属した04年に現役を引退した。