【巨人】育成出身初の初登板初先発勝利、メルセデスはカープアカデミー出身だった

スポーツ報知
プロ初登板、初先発で勝利したメルセデス(右)はウィニングボールを手に高橋監督と並んで笑顔を見せる(カメラ・矢口 亨)

◆ヤクルト3―6巨人(10日・神宮)

 巨人の育成から支配下選手になったばかりの24歳左腕・メルセデスが、5回を投げ5安打無失点。デビュー戦でプロ初勝利を挙げた。今月1軍昇格して2連勝したヤングマンに続き、起用に応えた。育成から支配下になった投手の初先発勝利は12球団初の快挙だ。打線は2回に長野が先制ソロ、4回には坂本勇に2ランが飛び出し、426日ぶりの「サカチョー」アベック弾で援護した。チームは3連勝で2位に浮上した。

 憧れの1軍でジャパニーズドリームをつかんだ。プロ初登板初勝利。ウィニングボールを握り締めたメルセデスは「ハッピーな気持ちでいっぱいです。ボールはママ(ノルマさん)に贈ります」と笑った。チーム内では俳優の船越英一郎似と言われ愛される助っ人は「(自らの名前の頭文字から)CCと呼んでください」と改めてあいさつした。

 9日に支配下登録されたばかり。早速の1軍先発にいつもの“暗示”をかけた。「野球選手の中では自分がナンバーワン」。角度ある直球をコースに投げ分け、スライダー、チェンジアップなどを使い翻弄した。3点リードの4回。先頭・山田哲の中前打から暴投も絡み2死三塁としたが、坂口を直球で遊直に仕留めた。最速147キロをマーク。打たせる投球で5回88球、無四球5安打無失点と快投した。

 逆境をはね返してきた。16年には母国・ドミニカ共和国でカープアカデミーの一員として、広島の真っ赤なユニホームを着て、約1年間プレーした。だが契約更新されず。本人は「理由はあまり分からないんだ」と話したが、野球で大成するという夢を諦めなかった。その後、巨人の入団テストを受け、17年に来日が決まった。

 基本3軍スタートの育成で、球団が求めるハングリーさを培ってきた。キャンプでは慣れない寒さの中、朝の散歩にも参加。宿舎は共同部屋で過ごし、朝から晩まで野球漬けだった。夏場の蒸し暑さには「ツカレタ…」とこぼすこともあったが、母国に住む家族を思い努力を続けた。

 カロリーナ夫人との間に昨年6月に男の子が誕生。フェニックス・リーグが終わる11月の帰国まで会えない日々が続いた。毎日テレビ電話をつなぎ近況を報告。帰国した時には家族写真を大量に収め、クリスマスに撮った写真はキーホルダーにして、練習用のリュックにお守りとして付けた。

 来日当初はほっそりした体だったが、練習メニューをこなし下半身はガッチリとした体に。「ついつい食べすぎちゃうから太ったんだ」と笑いながら説明するが、カレーライス、ラーメン、焼き肉…など日本食にも順応。球威も増した。

 今季はメルセデスの他にアダメスも支配下登録の枠を手に入れた。15年10月に3軍を新設して今年で3年目。他球団からの補強だけではなく、「育成の巨人」も実ってきた。由伸監督は「しっかり結果を残した選手が1軍でも結果を残すとチームとして大きい。みんな続いてほしい」と、若手の台頭を歓迎する。

 「一瞬一瞬は長いなと思ったが、振り返ってみると短かった。いい時間だった」。チームは2位に浮上し、借金「2」。逆転Vに向け、また頼もしい戦力が加わった。(玉寄 穂波)

 ◆クリストファー・クリソストモ・メルセデス(Cristopher Crisostomo MERCEDES)1994年3月8日、ドミニカ共和国生まれ。24歳。2012年から15年まで米レイズ傘下でプレー。先発と中継ぎでマイナー通算58試合に登板し、6勝10敗。17年1月に巨人と育成契約。昨年は2軍公式戦18試合に登板。今季は同6登板で26回1/3、防御率2・05。188センチ、82キロ。左投左打。年俸は推定5万ドル(約550万円)。背番号「95」

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