【巨人】山口俊、小林に感謝のノーヒットノーラン! 原点「クアトロK」の教え

スポーツ報知
ノーヒットノーランを達成しナインと小林と抱き合う山口俊(中央)(カメラ・中島 傑)

◆巨人5―0中日(27日・東京ドーム)

 巨人の山口俊がプロ野球史上79人目(90度目)のノーヒットノーランを達成した。中日相手に許した走者は7回の四球による1人だけの準完全試合。チームでは12年の杉内以来12人目(16度目)の快挙で、今季8勝目を挙げた。打ってはこの日、支配下登録されたばかりのマルティネスが「7番・二塁」で即スタメン出場。巨人の育成出身では初めてとなる初打席本塁打の衝撃デビューを飾った。8回には岡本が18号3ランを放ち、チームは連敗を6で止めた。

 場内が異様な雰囲気に包まれた。歴史的快挙を期待する大歓声の中、山口俊はギアを上げた。9回2死。大島をフォークで一ゴロに打ち取る。マウンドを駆け降りて一塁ベースカバーに走ると、一塁手・岡本がベースに足からスライディング。27個目のアウトが完成し、史上79人目のノーヒットノーラン達成だ。ベンチから飛び出したナインから祝福され、満面の笑みで喜んだ。

 「野球をやっている以上、プロの世界でノーヒットノーラン、完全試合は夢。達成できてうれしいです」

 記録のピンチは何度かあった。大島への四球でこの試合初めて走者を出した7回、1死三塁から平田の三ゴロをマギーが完璧な送球で本塁タッチアウト。8回の藤井の三直もマギーがジャンプ一番で好捕。「6回くらいから記録を意識しました。一人ではできない。僕以外の8人が守ってくれたので達成できた。感謝しています」と頭を下げた。

 103球の準完全試合。自分でも信じられない快投だった。「状態は良くなかった」というのだ。救ってくれたのは1か月ぶり先発マスクの小林だ。「誠司がうまく引き出してくれた。うなずいて投げるだけでした」。シンプルな直球主体の配球に乗せられた。斎藤投手総合コーチも「ブルペンはひどかった。いい球が一つもないし制球もバラバラだった」と驚いた。

 今季は8勝6敗。前回20日の広島戦(マツダ)は「屈辱的でした」という2回7失点KOを食らったが1週間で借りを返した。悪い時も山口俊は絶対にグラウンドでは胸を張り、絶対に下を向かないと決めている。転んでもすぐに起きあがれる根底には、ベイスターズで培った財産がある。

 「プロに入ったばかりの頃、先輩に教えてもらったんです。木塚(敦志)さん、加藤(武治)さん、川村(丈夫)さん。皆さん、そういうタイプの投手だった。それが今に生きています」

 クルーンとともにリリーフ4人の頭文字を取り「クアトロK」と称された先輩たちの、気迫むき出しの前のめりな姿勢。大いに勉強になったという。山口俊は感情を出すタイプではないが、秘める闘志は人一倍強いものがある。

 右肩痛で出遅れた昨年は初登板の6月14日のソフトバンク戦(東京D)で6回無安打無失点。継投によるノーヒットノーランでお立ち台で涙した。その後、グラウンド外のトラブルで出場停止に。今年は「新人の気持ちで」「結果を残すしかない」と覚悟し、12球団最多の6完投とフル回転する。

 この日は1年前と一転、涙なし。お立ち台で泣くフリを見せる余裕があった。「去年はFAできて出遅れてきつかった。今年はこうやって投げられている。その辺の違いですかね」。自身の試合から始まったチームの連敗は6でストップ。大記録で長いトンネルを抜け出した。(片岡 優帆)

 ◆山口 俊(やまぐち・しゅん)1987年7月11日、大分県生まれ。31歳。柳ケ浦から05年高校生ドラフト1巡目で横浜(現DeNA)に入団。大型右腕として先発と救援の両方で活躍。FA権を行使して昨季、巨人に移籍した。今季でプロ13年目。通算成績は48勝51敗111セーブ。187センチ、97キロ。右投右打。父は元幕内力士の谷嵐。年俸2億3000万円。

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