【巨人】代打・阿部 1点差9回、フルスイングで同点打

スポーツ報知
9回1死一、三塁、鈴木博(手前)から右前に同点適時打を放つ代打・阿部(カメラ・竜田 卓)

◆中日4x―3巨人(3日・ナゴヤドーム)

 久しぶりの感触だった。真ん中付近への剛速球を、阿部はフルスイングで押し返した。鋭いライナーが右前で弾む。「久しぶりの打席だったから、前に飛んでくれてよかった。甘いボールを仕留められた」。1点を追う9回1死一、三塁。鈴木博の147キロをとらえ、土壇場で試合を振り出しに戻した。7月26日のヤクルト戦(京セラD)で代打で登場して以来の出場だった。7月10日のヤクルト戦(神宮)以来となる安打で、打点もその試合以来およそ3週間ぶりだった。

 今季は代打の切り札としてベンチ待機している。交流戦期間中はDHでスタメン出場していたが、それ以降は再び勝負所に備えてベンチ裏で集中力を研ぎ澄ませる日々だ。「やればやるほど、代打の難しさがわかってくる」。味方がチャンスを作れば闘争心にスイッチを入れるが、直前で得点機がつぶれ一度リセットということも珍しくない。エルボーガードやフットガードを一度全て外し、次の出番に向けてまた一から集中力を高めていく。その繰り返し。出番なく終わる試合でも、疲労感はスタメン時とそう変わらないという。

 だからこそ、体を常にベストコンディションに近づけておくことを重視している。7月中旬以降は猛暑に加えて屋外球場での試合が続いていたが、早出練習に出てくる阿部はいつも分厚いジャージーを着込んで炎天下でランニングした。「『暑い』と思うのがいけないんだよ。『ここはグリーンランドなんだ』って思えばちょっとは涼しくなる」。遠征先への移動日で野手が休養日となっていても、投手練習に交じって黙々と走り込んだり、遠征中も厚着で宿舎周辺をウォーキングするなど、あえて体を追い込んで調整している。

 坂本勇や吉川尚を故障で欠き、攻撃陣は窮地に追い込まれている。だからこそ、競った展開で迎えた終盤、阿部のバットにかかる期待は大きい。「一丸となって乗り切っていくしかない」。土壇場の同点打もむなしくサヨナラ負けを喫したが、引きずるわけにはいかない。阿部の頭の中も、次の勝負所に向けて切り替わっているだろう。(尾形 圭亮)

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