【巨人】重信、憧れの中日・松坂からプロ1号「まさか入るとは」

スポーツ報知
2回2死、重信が右越えにプロ初本塁打を放つ(投手・松坂、捕手・大野奨=カメラ・中島 傑)

◆中日9―13巨人(2日・ナゴヤドーム)

 確かな手応えはあった。それでも重信は全力で打席を駆け出した。一塁を大きく回ったところで、ライナー性の打球が右翼フェンスをギリギリ越えた。視界のスミに腕を回す審判の姿を捉えると、ようやくスピードを緩めた。「ライト(の頭)は越えると思ったけど、まさか入るとは思わず一生懸命走ってました」。プロ初アーチとなる1号ソロ。初めてダイヤモンドをゆっくり一周する時間を楽しんだ。

 記念の一撃は2回2死に生まれた。1ボールから松坂の136キロツーシームを振り抜いた。幼少の頃からテレビで目にする度「スーパースター。すごく格好いいなと思っていた」と憧れたレジェンドから、第一歩をしるした。初回も無死二塁から右前安打で好機を拡大。その後、1死一、三塁から岡本の初球で二盗を成功。主砲を併殺の重圧から解放させ、V弾を“足スト”した。7回の中前安打も含め、今季5度目となる猛打賞の活躍に「昨日(1日)仕事ができなかったので、思い切り、積極的に行こうと思っていた」と気を吐いた。

 足を大きく開き、がに股気味に構えるフォームは、「クロスステップする癖があるので、そうならないために」。参考にするのはヤクルト・青木。時間があれば打撃の動画を繰り返し見たり、ヤクルト戦では今季、日本球界に復帰した早大の大先輩の打撃練習を必ず食い入るように見つめる。

 マイナスも大きな転機となった。3月のオープン戦中に下半身のコンディション不良を発症。ファームでのリハビリを余儀なくされた時、川相2軍監督から通達された。「大卒でプロ3年目だったら、もうちょっと体を大きくしないと。リハビリはもう一度自分を見直せるいい機会じゃないか」と指摘され、肉体改造を決意。3食の合間におにぎりを胃に詰め込むように食べるなど、1日7食の食事に加えて徹底したウェートトレで体重6キロ増に成功。打球の質が明らかに変わったことは自他共に認める部分で「継続してやっていければ」と意気込む。

 ただ、立ち位置はわきまえている。最大の持ち味は、チーム一の俊足。全力でダイヤモンドを駆け巡り、相手をかき回す姿こそ真骨頂。「僕は本塁打を狙える打者ではないので。もう、本塁打は忘れます」。両手に残った甘美な感触に、未練はない。(西村 茂展)

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