【巨人】畠、好救援で初白星…打者4人完全 由伸監督の執念乗り移った

スポーツ報知
7回途中、リリーフカーを降りてマウンドにダッシュで向かう畠(カメラ・酒井 悠一)

◆阪神1―2巨人(23日・甲子園)

 巨人が総力戦で1点差試合をものにした。1点リードの7回に上原が同点とされたが、なお2死一、三塁のピンチで救援した畠が福留を見逃し三振に仕留め、猛虎の勢いを断った。8回、途中出場の立岡が勝ち越し打。イニングをまたいで1回1/3を3奪三振と完璧に封じた畠から、山口俊につないで逃げ切った。畠は今季初勝利。山口俊は、5年ぶりのセーブ。甲子園での阪神戦は5連勝で、4位・DeNAとは1ゲーム差に広げた。巨人は自力でのクライマックスシリーズ(CS)出場の可能性が復活した。

 剛速球がうなりをあげ、ミットをたたいた。畠の153キロは、福留の内角低めにズバッと決まった。見逃し三振。チェンジだ。上原を助け、チームを救い、流れを呼び込んだ。ベンチの由伸監督は大きくうなずき「力強い球が来ていた」と笑顔も見せた。1点リードから上原で同点とされた7回。なおも2死一、三塁。大ピンチから脱するスーパー救援だった。

 予定では8回からだったが「(投手コーチの)豊田さんが『ピンチになったら頭に入れて』と言っていたので。いい準備ができました」と動じなかった。直後の8回、立岡の中前適時打で1点を勝ち越した。なおも満塁で、畠の打順。セオリーなら代打を起用し、追加点を狙いにいくケースだ。だが指揮官は「次のイニング(8回)を何とか0点で抑えたかったので」と、そのまま打席に送り出した。

 ベンチでは田中俊や陽が代打待機していた。ブルペンでは野上や谷岡、池田が肩を作っていた。それでも由伸監督が選んだのは「次の1点」よりも「畠の投球」だった。畠は見逃し三振に倒れたが、8回裏は見事に3人斬り。MAX154キロで糸井、大山を2者連続三振に抑えるなど、ベンチの期待に応え、今季初勝利までも飛び込んできた。

 実際、畠の中継ぎ起用には反対意見もあった。腰痛から8月11日に3軍戦で復帰したばかり。当初2軍の首脳陣はCSでの秘密兵器に―と考えていた。しかし、由伸監督が「畠を後ろで使いたい」と打診した。

 故障明けでどこまで球威が復活するかは未知数。一方で1軍の中継ぎ事情は苦しかった。けがで帰国したマシソンとカミネロの代役に、まずは山口俊を抑えに配置転換。そして畠を抜てきし、11日に昇格させた。今季の1点差試合がそれまで9勝23敗と危機的状況だったため「何か手を打たないと、チームはいい方向に動かない」との考えだった。

 半ば強引にも、終盤を固めた。いかに畠へとつなげるかが、ゲームプランとしてできあがった。だから早めに動けた。先発の今村へ、5回2死一、二塁の好機で代打を出した。4回まで2安打無失点。周囲のコーチ陣も驚く交代だったが「ここは勝負です!」と制した。「何とか点を取りたかった。行かなきゃいけないと思った」。代打の宇佐見は一ゴロも、この積極采配がナインに火をつけた。阿部は「監督の強い意思を感じた」と6回に右前へ先制適時打。チームに活力がみなぎった。

 1点リードの9回は新守護神・山口俊で逃げ切った。畠との新方程式を確立し、由伸監督は「大きいよね」と手応えを口にした。「選手が死力を尽くしてくれた。精いっぱいにやってくれた」。残り7試合へ、光が差す白星だった。(水井 基博)

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