【巨人】菅野、涙の辞任報告に「由伸監督のため」チーム55年ぶり8完封

スポーツ報知
広島に完封勝利した菅野〈19〉を笑顔で迎える高橋監督(カメラ・馬場 秀則)

◆広島0―4巨人(4日・マツダスタジアム

 巨人が由伸監督の辞任発表翌日、広島に快勝し、4位・DeNAとの差を1ゲームに広げた。エース・菅野が気迫の投球を披露。広島打線を4安打に抑え、今季8度目の完封勝利。15勝目を挙げ、広島・大瀬良に並ぶハーラートップに立った。シーズン8完封以上はチームでは1963年の伊藤芳明(10完封)以来。阿部は8回に今村から右翼へ11号ソロを放ち、通算400号本塁打に王手をかけた。残り1試合。日本一を目指し、チーム一丸で由伸監督と突っ走る。

 ビジター席からの「由伸コール」が止まらない。試合後、菅野は由伸監督やナインと整列し、巨人ファンに手を振ってあいさつした。成績不振の責任を取り、指揮官が今季限りで辞任すると前日3日に発表されて迎えた一戦。エースは沢村賞の選考基準7項目全クリア達成という歴史的な3連続完封勝利で白星をささげた。

 「自分たちが力及ばなかったというところもある。何とか最後はいい形でと。今日はもう、(普段は)誰のために投げようということはあまりしないんですけど、しっかり監督のために投げようと思いました」

 練習前のミーティング。ロッカー室で由伸監督から選手に直接、辞任が伝えられた。「悔しいけどこれが現実なので」と普段は絶対に見せない涙を流して謝罪した指揮官。菅野は気合十分でマウンドに上がった。

 序盤から直球にキレがあった。9回には丸を149キロで空振り三振。この日11個目の三振で200奪三振となり、巨人では江川卓以来37年ぶり「200イニング 200奪三振」達成。この瞬間、大声を出した。沢村賞を獲得した去年、選考基準の10完投と200イニングが届かず、今年は「全7項目クリア」を掲げ、2年連続同賞受賞も見えてきた。

 「去年の段階から狙って沢村賞を取る、と言ってきた。ただ、自分の力だけでは絶対に達成できる数字ではないですし、使ってくれた監督、投手コーチ、トレーナーさんであったり、みんなに感謝したいです」

 小さい頃から由伸監督に憧れて野球をやってきた。「小学生の時、初めて由伸さんにお会いしたのが、原監督の家。その時は選手として一緒にプレーするとは思いもしなかった」。13年に巨人入団後は、常にけがを恐れない全力プレーを貫いた由伸監督の姿を目に焼きつけ、魂を継承した。

 マツダで今季チームはこの日の試合前まで1勝9敗1分け。7月に同球場で菅野は5回6失点して敗れた。その日の試合後、広島の宿舎で捕手の小林と深夜まで配球のミーティングをし、徹底的に対策を話し合った。「全てを受け止めて、ねじ伏せるしかないですよ」。あの時の決意の言葉をこの日、実践した。

 試合後、由伸監督は「すごいね。すごいの一言」とエースを絶賛した。16年開幕戦で由伸監督に「監督1勝」を贈った菅野は引き締まった表情でこう言った。

 「このマツダでチームとしてゼロに抑えて勝った。CSでここでやることになると思うので、弾みがつくと思いますし、非常に大きい1勝だと思います」

 勝利数でトップに並び、防御率、奪三振、完封の4部門でトップ。最高勝率の可能性も残されており「投手5冠」も手が届きそうだ。由伸監督と一日も長く野球をやるために―。魂を白球に込めた。(片岡 優帆)

 2度目3戦連続完封は2リーグ制後では巨人初!

巨人先発の菅野は無四死球で11三振を奪い、昨年4~5月に次いで2度目となる3試合連続の完封勝ち。“無四死球&2ケタ奪三振”の完投は過去に2度あったが、完封で飾ったのは初めて。9月15日DeNA戦の4回から続く無失点は31イニングとなり、16年3~4月の30イニングを抜く自身最長記録となった。

 1リーグ時代には3試合以上の連続完封を複数回マークした投手が、スタルヒンと川崎徳次の各3度、藤本英雄2度と巨人にも3人いたが、2リーグ制(50年)後では金田正一(58年国鉄、65年巨)、米田哲也(阪急=64、65年)、バッキー(神=65、66年)に次いで4人目。2リーグ制後のチームでは菅野が初めてになる。

 これで今年は8度目の完封勝利。シーズン8完封以上は78年に8完封の鈴木啓示(近鉄)以来となり、巨人では63年に10完封の伊藤芳明以来、55年ぶり。ちょうど200に到達した奪三振も、チームでは81年に221奪三振の江川卓以来だ。

 記録的な投球を続ける菅野は防御率2・15、奪三振200に続き、勝ち星でも大瀬良(広)の15勝と並んでセのトップに立った。

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