【巨人】山口鉄、想像もしなかった13年「願いは叶う」…「育成の星」涙なし引退会見

スポーツ報知
引退会見を行った山口鉄(中央)を囲んで笑顔を見せる(前列左から)菅野、内海(1人おいて)杉内さん、村田さん(後列左から)宮国、沢村、坂本勇、長野(カメラ・矢口 亨)

 巨人の山口鉄也投手(34)が5日、都内で会見し現役引退を発表した。前人未到の9年連続60登板など、フル回転した左肩に「お疲れさま」などと声をかけた。「育成の星」は「未来の育成の星」を目指す若手選手に向け「一流選手に触れて、見て、聞いて」と金言。会見には、サプライズで巨人ナインと今季で現役引退した杉内俊哉さん、村田修一さんも駆けつけ、長年の功績に拍手が送られた。

 謙虚に、丁寧に感謝の言葉を並べた。山口鉄はスッキリした表情で会見した。「本当にやりきったという気持ちです。いろんな方との出会いのおかげだと思います。感謝しています」。左肩痛で引退を決断したが、長年フル回転した自身の左肩に声をかけるなら、と聞かれると、優しく語りかけるようにこう言った。

 「まさかこんなに左肩を使うとも思っていなかったので(頑丈さに)ビックリしたよと、言いたいです。あとは朝起きて、今日は痛いのかな痛くないのかなともう考えなくていいよ。お疲れさまと言いたいです」

 高校卒業後、米独立リーグで3年間プレーして巨人のテストを受験。育成選手として入団し、3年目の08年から9年連続60登板。絶対的な左のリリーフとして一時代を築き「育成の星」と称された。夢をつかんだ男は「未来の育成の星」に向け貴重な金言を贈った。

 「自分もそうだったんですけど、とにかく1軍の選手とか一流の選手に触れることだと思います。見て学ばせてもらいましたし、いろいろアドバイスもいただきました。それが一番うまくなる近道だと思います」

 自身は1年目の06年オフ、工藤公康(現ソフトバンク監督)と自主トレ。「全てを投球につなげろ。筋トレしていても、投球にどう役に立つのか考えながら。ランニングをしている時も」と教わった。現代の若い選手たちにも貪欲さを常に持ってほしい、と願っている。

 会見が終わると、別室で待機していた杉内さん、村田さん、内海、長野、坂本勇、沢村、菅野、宮国がサプライズで登場。親交の深いメンバーから花束を贈られた。これだけのメンバーが集まるのは異例で、山口鉄の人望が厚い証しだ。

 ナインからは、普段は感情を出さない控えめな山口鉄がかつて、元DeNA・モスコーソ投手のガッツポーズが格好いいと試合でまねするも、周囲から「似合わない」と不評すぎて、すぐにやめたという温かいエピソードも明かされた。それだけ愛される男だった。

 「13年間、楽しいことも苦しいこともありましたけど、全てが自分にとって財産となりました。とても幸せな日々を過ごせました」

 最後まで涙なし。希代の鉄腕が現役生活に別れを告げた。(片岡 優帆)

 ◆山口 鉄也(やまぐち・てつや)1983年11月11日、横浜市生まれ。34歳。横浜商から米大リーグ・Dバックス傘下ルーキーリーグを経て、05年の育成ドラフト1巡目で巨人入団。07年4月に支配下登録され、08年に新人王。09、13年WBC日本代表。最優秀中継ぎ投手のタイトル3度獲得。通算642登板、52勝27敗29セーブ、歴代2位の273ホールド、防御率2・34。184センチ、88キロ。左投左打。年俸2億2400万円。

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