【巨人】坂本勇、下克上日本一へ体勢崩されても決勝弾…同期・寺内のためにも

スポーツ報知
3回1死、坂本勇が小川(手前)から勝ち越しの左越え本塁打を放つ

◆2018 マイナビ クライマックスシリーズ セ ヤクルト1―4巨人(13日・神宮)

 体勢は崩されても、バットの芯で捉えた打球は弧を描きながら左翼席最前列へ飛び込んだ。相手に傾きかけた流れを、坂本勇が引き戻した。2回に同点に追いつかれた直後の3回1死。2球連続で内角直球で攻められたが、カウント1―1からの3球目、小川の外角低めのスライダーを振り抜き決勝ソロを放った。「入るか入らないかわからなかったので走ったけど、入ってよかったです」。球団最多を更新するCS通算7号に、ベンチは大きく沸いた。

 小川には16年からシーズンでは8連敗中。15年のCS最終S第2戦でも8回まで無得点でチームは完封負け。それでも「CSになったらまた違う気持ちになる。何回も負けているので、絶対に倒したい」。有言実行の一撃で天敵に土をつけた。

 今季限りで辞任する由伸監督との約束を最後に果たすためにも、負けるわけにはいかなかった。3年間、勇人は主将を託されてきたが、頂点の座は遠かった。「勝てなかった責任は監督だけじゃなく、選手にだってある。由伸監督を胴上げしようと頑張ってきたけど、できなかった。本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです」。誰よりも悔しがった。

 ただ、シーズン最終戦でCS進出を決めたことで、最後のチャンスも生まれた。「1試合でも多くやりたい。そういう気持ちをもってやりたい」。その思いを体現するかのように、序盤から守備でも堅実なプレーを見せ、チームを攻守で支えた。

 短期決戦を前に、心揺さぶられる出来事もあった。現役引退を決断した寺内が12日、G球場を訪れた。06年ドラフトで巨人には育成を含め16人の選手が入団したが、現役でプレーしていたのは寺内と勇人だけ。5歳上の同期がユニホームを脱いだことで、ついに最後の一人になった。「一日でも長くプレーしてね」とエールを送られ、勇人は「さみしい気持ちはあるけど、そう言ってくれたのはうれしい。そういう思いも背負って、少しでも長くプレーしないと」と決意した。さまざまな思いを胸に戦うCS。大舞台になればなるほど、背番号6は輝きを放った。

 CS第1S突破へ王手をかけた。「チーム全員で戦えた。また明日頑張ります」。誰よりも勝利に飢えている主将が、下克上日本一の瞬間まで、チームを引っ張っていく。(後藤 亮太)

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