【巨人】水野投手コーチ「超・実力至上主義」マウンドに立つ心構え説く

2018年12月14日12時0分  スポーツ報知
  • 秋季キャンプで若手投手陣に指示を出す水野コーチ(右)
  • 身ぶりを交え丁寧にアドバイスする水野コーチ(右)

 新生・原巨人の新コーチに方針などを聞くスポーツ報知の独占インタビュー。第5回は水野雄仁投手コーチ(53)が登場だ。現役時代は先発、中継ぎ、抑えに敗戦処理とあらゆるポジションを経験した男が実体験から説く、投手がマウンドに立つ際の心構えとは。年齢を問わず、先入観も持たず、現実の力量だけを見極めていく「超・実力至上主義」を打ち出し、巨人の復権を支えていく意向を余すことなく語った。(取材・構成、西村茂展、玉寄穂波)

 01年以来、17年ぶりに巨人のユニホームに袖を通した。長年、スポーツ報知評論家としてグラウンドの外から巨人を見続けてきたからこそ、現場に戻った今、投手たちに伝えたい思いがある。

 「最後の最後は、自分が自分の応援団長になってほしい。誰もが『その場面はあいつには無理だ』と思っても、『自分ならやれる』って思ってほしい。自分で自分を応援できないようじゃダメ。自分を疑っているヤツに、いい投手はいない。マウンドに上がったらうぬぼれて、自分に酔ってほしい。そういう堂々とした態度でいてほしい」

 勝負の世界で白黒がつくのは当然のことで、どんな好投手でもいつも抑えられるわけではない。ただ、コンディショニングに関してはシビアだ。戦いの舞台にすら立てない者には、厳しい言葉を投げかける。

 「(評論家として)シーズン中も書いたけど、打たれた投手を非難しちゃいけない。マウンドに上がってる投手は、ジャイアンツの投手全員の代表として上がってるんだから。投げられることにプライドを持って、けがをしてるっていうのは恥じてほしい。投げられる状態を作るっていうのが、プロとしての最低限の仕事」

 水野コーチは現役時代に先発、中継ぎ、抑えと全てのポジションを経験した。それが指導者になった今、強みでもある。メンタル面のサポートも徹底する。

 「全部の(投手の)ポジションを経験したことは自分にとってはいい財産。晩年になって一番しんどい敗戦処理もやっている。それぞれの立場の気持ちは、ある程度分かってあげられる。(ブルペンから送り出す際に)暗示をかけたり、そういうことも大事」

 宮本投手総合コーチも含めて1軍投手コーチは一新された。過去の実績は何の意味も持たず、全て横一線からの競争を強調する。現実をフラットに見極めることを約束し、年齢を問わないアピールを求めた。

 「2年、3年と見ていると悪いところに目が行きがち。そういう悪いレッテルを貼って、どこかで『あいつはいいや』っていう感じで見てしまうもの。俺と宮本さんはフラットで新鮮な目で見る。若手だろうが年寄りだろうが、1軍のマウンドに上がるのに年齢制限はない。実際投げてる球であったり、立ち振る舞いを見て1軍のメンバーは決めていく」

 今季のチーム防御率3・79はリーグトップ。全投手の奮闘あってこその数字だが、絶対エース・菅野への依存度は高い。投手陣の能力底上げへ、水野コーチはまず「(1軍から3軍まで)同じ空気感を作ること」が必要と強調した。

 「ファームのコーチも全部集めて、投手40人全員と一人一人話し合う。『今のコンディショニングはこれくらい』『ローテーションを目指しているのか』『リリーフの一角を狙っているのか』。全ての情報をできるだけ共有して、バッテリーコーチも『じゃあこの投手にはどう声をかけたらいいのか』とか、そういうことも統一できるようになったら最高だな、と」

 春季キャンプでは、各投手との個人面談の機会も設けようとプランを練っている。来季のV奪回だけではなく、常勝軍団として巨人が再び球界の頂点に君臨することを目指している。

 「たとえ俺や宮本さんが抜けても、『投手はこうやって作ってきたんだ』というのが残るなら。なんとか、強い投手グループを作れる体制にしたい」

 評論家時代は主に1軍の試合を観戦していたが、この秋のキャンプでは育成選手を含めて多くの若手投手を見た。完成度では1軍レベルに達していないが、大きな可能性を感じたという。

 「全員が面白いと思った。実際ファームの情報とかを聞いたりするけど、全部が全部見たりできるわけじゃないんで『あぁ、こういう球投げるんだ』とか。『育成の子でもこんなに頑張ってるんだな』とか。育成の子も育成と見ないように、一人の投手として見てあげたい」

 投手陣の柱は当然、菅野になる。ただ、今季2ケタ勝利を挙げたのはそのエースのみ。菅野に次ぐ投手の台頭が不可欠だ。今、頭に描く「キーマン」は誰か―。

 「リベンジに燃える田口もいる。(今季6勝を挙げて)何かつかんだ今村も今季同様にやってくれるか。メルセデスだって研究されて、どうなるか保証はない。その一方で、(来季)3年目の高田が飛躍するかもしれないし。それぞれが今年より来年、飛躍してほしいなという気持ちに違いはない。例えば桜井にしてもドラフト1位で入ってきて、現状はくすぶっている。何か変われるきっかけを作ってやりたい」

 長らく外側から試合を見続けて、感じた思い。現場の最前線で体現していく。

 ◆取材後記 ユニホームはやはり、人を変える。話を聞くにつれ、その思いが強くなった。評論家時代に接していた際には物腰が柔らかく、ふんだんに冗談を交えながら―がトレードマークだったが、今回、巨人投手陣の現況を語る際、笑うことはなかった。

 「もう野球を評論するのは終わったので。鍛えあげて戦う集団を作るしかないからね」。オフの約束を全て断って、秋季キャンプに参加。若手投手をじっくりと観察し、指導した。「まぁこんなにも生活が変わるなんてね。ゴルフも全部キャンセルしてさ」と嘆く姿もどこかうれしそうだった。

 最後に、鋭い視点の解説を楽しみにしてきた本紙読者には残念なお知らせが届いた。「もう報知には戻ってきません、というつもりで頑張っていきます。一番のジャイアンツファンはスポーツ報知の読者。その人たちが楽しみになる原稿が載るようにね」。骨を埋める覚悟で、オファーを受けた。男の決断に、来季の希望が広がった。(巨人担当・西村 茂展)

 ◆水野 雄仁(みずの・かつひと)1965年9月3日、徳島・阿南市生まれ。53歳。池田高では「阿波の金太郎」のニックネームで親しまれ、82年夏の甲子園、83年春のセンバツを連覇。83年夏も4強。同年ドラフト1位で巨人入り。通算265試合で39勝29敗17セーブ、防御率3.10。96年に現役を引退。98年にはドミニカ・ウィンターリーグへ。その後はパドレスの春季キャンプにも参加。99年から01年まで、巨人1軍投手コーチを務めた。178センチ、82キロ。右投右打。

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