【巨人】後藤打撃コーチ、韓国での指導経験「いいとこ」取り入れて常勝軍団再建

スポーツ報知
11月の秋季キャンプ、打撃練習を行う小林(左)にアドバイスを送る後藤コーチ

 原巨人の新コーチに方針などを聞くスポーツ報知の独占インタビュー第6回は、後藤孝志打撃コーチ(49)。今季は韓国プロ野球でコーチを務め、1年ぶりに巨人へ帰ってきた。自身のコーチングの根幹を「パクリ」と言い切る後藤コーチは、アジアのライバル国から何を吸収し、常勝軍団の再建にどうつなげようとしているのか。(取材・構成=尾形圭亮)

 昨オフに巨人の3軍外野守備打撃コーチを退任し、今年は韓国・斗山で指導に当たった。斗山は今季リーグ優勝。頂点に立つチームには、どんな特徴があるのか。

 「雰囲気とファミリー感ですよ。もう家族みたいなチームでした。監督は厳しい方でしたけど、監督に怒られることに選手が萎縮しない。『おぉ、言ってもらえた』みたいな。昔のジャイアンツみたい。だって、監督から話しかけられたらめっちゃうれしかったですから。ひとつの家族じゃないと『そのために』とは動けない。そういう意味では、原監督ってすごく話しかけるしファミリーみたいですよね」

 長年、国際舞台でしのぎを削ってきた日本と韓国。同じアジアとはいえ、野球に対する考え方にはかなりの違いがあったという。

 「韓国は『選手のコンディションが一番』というところに衝撃を受けました。例えば日本は、選手が疲れてきたら、もっと体力をつけるために練習する。そういうことはしない。疲れてきたら休ませる。何のために練習するのか? 試合のためですよね。オンとオフがはっきりしてるのが韓国。そこはアメリカよりもはっきりしてました」

 故障離脱は選手個々にとってもちろんマイナスだが、戦力ダウンはチームの順位だって左右しかねない。韓国で見てきたものを、巨人にも取り入れたい考えだ。

 「僕の人生、パクリなんで。『この国のいいとこはここだな』と。いいとこを全部パクってものにしたい。僕ひとりで決められることじゃないですけど、疲れのためにコンディションが落ちてるなら、少し練習時間を短くしてオフに充てたり。みんなで話し合って決めていきたい」

 チームに復帰した直後の秋季キャンプでは、タブレット端末で打撃練習の様子を頻繁に撮影。すぐに選手に見せ、話し合うシーンが目立った。

 「目から入ってくる情報が95%くらい。『こうなってるよ』と言われるより、見せてあげたほうが納得するだろうし、撮られてたら、見せてほしくないですか? 求められていないのにこっちから話しかけても入ってこないと思うんですよね」

 以前、巨人でコーチを務めていた際には、打撃不振に苦しんでいた亀井に「ブラインドショット」を伝授し復活へ導いた。ボールを捉えることだけを考え、その後の結果は遮断(ブラインド)するという、心理学的アプローチだ。

 「メンタルがプレーに及ぼす影響って80%くらいあると思います。だから韓国でも、ほとんど考え方しか教えていない。打席での待ち方なども含めて。練習に対する考え方もそう。練習をやりたくなるような言葉というのもメンタル。そういった部分でも、全ては考え方。そういうことを伝えていきたいと思います」

 入団時に指導していた岡本が開花した。史上最年少での「3割・30本・100打点」達成という華々しいブレイクだったが、驚きはない。第二、第三の岡本が出てくる予感もあるという。

 「カズマは野球に熱心だから、あとは大人の体にさえなれば何とかなると思ってました。当時はまだ乳歯があったんですよ。若い選手って、まだ大人の体になりきっていない選手もいる。『大人の体になったら絶対に進化するから』というのは言い続けたいですね。今年1年間で何ができるようになったか。何があれば活躍できるようになるか。(秋季キャンプで)それを聞いてまわった。地図上で自分がどこにいるかわからないと目的地に行けない。みんな、ほぼ即答できていたのが頼もしかったですよ」

 ◆後藤 孝志(ごとう・こうじ)1969年5月14日、愛知県生まれ。49歳。愛知・中京高から、87年ドラフト2位で巨人に入団。プロ通算835試合、打率2割6分3厘、30本塁打、119打点。引退後の06年にはヤンキース傘下1Aでコーチ留学。BCリーグ新潟の初代監督などを経て、14年から巨人の2軍や3軍コーチを歴任。18年は韓国・斗山で打撃コーチを務めた。右投左打。

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