【巨人】高橋尚成氏、現役キューバ代表の練習を突撃リポート!「目の輝きがすごい」

スポーツ報知
キューバの人々に大歓迎される尚成氏(中央)、槙原氏(右端)、駒田氏(左から2人目)

 OBで野球評論家の高橋尚成氏(43)がキューバの野球をリポート。同じくOBの槙原寛己氏(55)と駒田徳広氏(56)と現地の野球チームや、現役キューバ代表の練習を突撃。元キューバ代表のレジェンドたちとも触れ合い「素晴らしい経験をさせてもらった。日本がどれだけ恵まれた環境で野球ができているのかもよく分かった」としみじみと語った。(取材・構成=高田 健介)

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 本当に多くのことを学ばせてもらった。社会人・東芝時代、そして巨人に入団してからもキューバ出身選手とは何度も対戦した。DeNAでは、現アストロズのグリエルと同僚だった。彼らに共通するのは、ものすごくポテンシャルが高い、ということ。いつか、キューバを訪れて、各世代の練習や環境などを肌で感じたいと思っていた。

 今回、知人を介してそのチャンスを得ることができた。1月下旬から、駒田さん、槙原さんと一緒に、首都・ハバナを1週間、訪問した。ラテンアメリカ王座をかけて開催される「カリビアン・シリーズ」に参加する、キューバ代表の練習も見学した。日本なら「侍ジャパン」。もちろん、選手たちのレベルはかなり高いが、驚いたのは環境面の違いだ。

 球場はハバナで一番と言われているものだったが、日本のそれとは比較にならない。選手たちは1本のバットを何人かで使い回しているし、道具も新しい物ばかりではなかった。私も日本代表に選出されたことはあった。その時は多くの報道陣が練習から取材に訪れていたが、その姿もなかった。拍子抜けするくらい、静かな中で練習していた。グラウンドも芝、というよりは雑草という感じ。内野も日本のようにきれいに整備されてはいない。ただ、こういうグラウンドで守備をしているから、グラブさばきがいいんだろうな、とも感じた。

 トップリーグではない、地域リーグに所属しているチームに野球教室も開催した。日本で言えば、独立リーグと同じ立ち位置だろうか。30人くらいが参加し、多くは10代後半から20代前半の選手だが、彼らの置かれた環境はより、過酷だった。ユニホームはバラバラ。ある投手は、Tシャツにジーンズのようないでたちで投球練習をしていた。使っているボールも日本の2軍より質の悪いものだった。

 当日は、練習を教える前にスコールに襲われて、グラウンドが使えなくなった。私の感覚では「室内練習場でやろうか」というものだったが、そんな上等なものはない。たまたま、そのチームは現地の有志たちによって室内練習場を建設中で、今回はそこで指導することができたが、全てのチームがそうではない。ボール500個とバット30本、そして打撃用の手袋をプレゼントしたが、ものすごく喜んでくれたのも印象的だった。

 ただ、「野球がうまくなりたい」という貪欲さは日本人以上に持っているように感じた。彼らからすれば、我々は異国でプレーした外国人。「あまり真剣に聞かないかな」と思ったが、目の輝きはすごかった。投球動作などを身ぶり手ぶりで教えると、質問が止まらない。予定時間を30分以上オーバーしても、質問が終わらなかったほどだ。

 1週間の滞在はホテル暮らしで、食事もレストランで取り、苦労はなかった。ただ、スマートフォンなどを使おうと思ったが、Wi―Fiは専用のカードを購入しても500円で1時間しか利用できない。メジャーを経験し、アメリカでの生活も長かった私にとって、せめてホテルでは無料のWi―Fiが使えるかと思っていたが、甘かった。

 それでも、キューバでの野球人気はものすごかった。巨人にも在籍したセペダと食事をし、キンデラン、フンコ、ラソという元キューバ代表のレジェンドとも会う機会があった。そんな有名人と一緒に街を歩くと、いつの間にかファンに囲まれて写真を撮られまくった。現地の関係者も「こちらのちょっとした芸能人より、彼らは有名ですよ」と言っていた。

 コーチとして参加した昨年のU15W杯でも、キューバと対戦した。子供たちのパワーや技術の高さにも驚かされ、ぜひ、どんな練習をしているかを探りたかったが、今回、そのチャンスは訪れなかった。厳しい環境の中で切磋琢磨(せっさたくま)する選手たちを見ることができて本当に、勉強になった。ただ、1度の訪問では、キューバ野球のすごさを全て体感することはできなかった。今後もキューバを含め、各国の野球を探求していきたい。

 ◆カリビアン・シリーズ ラテンアメリカの国際野球大会。参加チームは、キューバ、ドミニカ共和国、メキシコ、プエルトリコ、ベネズエラからの5チーム。2月に開催され、2013年以降は5か国による1回総当たりののち、上位4か国のトーナメント方式で優勝を決める。今年はベネズエラで開催予定だったが、安全上の都合により、開催地をパナマに変更した。

 ◆高橋 尚成(たかはし・ひさのり)1975年4月2日、東京都生まれ。43歳。修徳高から駒大―東芝を経て、99年ドラフト1位で巨人入団。2007年には最優秀防御率(2・75)を獲得。09年オフにFA宣言。10年2月にメッツとマイナー契約し、開幕メジャー。13年オフにDeNAと2年契約し、5年ぶりに日本球界へ復帰。通算成績は261試合で79勝73敗15セーブ、防御率3・79。メジャー通算は168試合で14勝12敗10セーブ、防御率3・99。左投左打。

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