【巨人】由伸氏、丸と対談…FA移籍決断の理由やV3極意「もう1点」の精神に迫る

スポーツ報知
高橋由伸氏(左)と対談した丸。ともに右足を上げてタイミングを取る強打者同士の話は弾んだ(カメラ・泉 貫太)

 巨人の新戦力とスポーツ報知評論家による対談企画、第1回は「高橋由伸 丸に迫る」―。巨人前監督の高橋由伸氏(43)と丸佳浩外野手(29)がこのほど、キャンプ地の宮崎で対談。3連覇した広島からFAで移籍を決断した理由や、広島で培った「もう1点」の精神、古巣・広島と敵地マツダスタジアムで戦う3月29日の開幕戦への思いなどに迫った。(取材・構成=水井 基博、後藤 亮太)

 由伸氏の待つ部屋に丸が入ってきた。2人はこれまで、球宴で二言三言の会話があった程度だという。憧れの巨人に移籍し、昨年までの指揮官との対面。緊張気味に「よろしくお願いします」とあいさつすると、力強い握手を交わした。

 由伸氏(以下・由)「合同自主トレからキャンプに入って約1週間だね」

 丸「ようやく慣れてきた感じがあります」

 由「1月の自主トレはG球場でやっていたけど、なんで?」

 丸「元々カープにいるときからマツダスタジアムでずっと自主トレをしていたので、どこでやるとかは特別考えていなかったんです」

 由「実際どう? 広島のキャンプとの違いは?」

 丸「個人練習という点ではジャイアンツの方が比較的、比重が多いかなと思います」

 由「巨人を外から見てきたイメージと入ってからの印象は変わった?」

 丸「もうちょっとサバサバしている感じなのかなと(笑い)。チームワークがないとかではなく、自分のやることをしっかりとやるみたいなイメージです。でも、(坂本)勇人さんや亀井さんとかがいろいろと教えてくださる。本当にみんなフレンドリーですね」

 由「ジャイアンツはFAとかで入ってくることに慣れている。もっとなれなれしさや、いじられ方もひどくなるかもしれないよ。自分のテリトリーは守った方がいいよ(笑い)」

 丸「分かりました。気をつけます」

 【由伸氏は丸との対談で、どうしても聞きたいことがあった】

 由「巨人の前監督として聞くけど、昨年は広島に7勝17敗1分け。17年は7勝18敗と散々やられたよ。広島の主軸として、巨人はどう見えていたの?」

 丸「巨人だから楽とかは思っていなかったです。ただ、(広島は)どこのチームとも限らず、少々負けていても『何とかなるだろう』という雰囲気がずっとあるチームでした。選手個々が役割をしっかりと把握しながら年間を通してやれたからこそ、数字に出たのだと思います」

 由「試合の序盤なんかは明らかに、『1、2点はくれてやるよ』みたいな雰囲気で戦っているのはすごい感じていた。案の定、ひっくり返されたりしたから。まあ強かったというのもあるし、いい意味での余裕も感じた。1、2点では勝てないと思っていたよ」集中 丸「ベンチ内では常に『もう1点、もう1点、もう1点、もう1点、もう1点』って、本当にもう耳にタコが出来るくらいみんなで声をかけあっていました。点を取ることに集中することを1年間ずっと、やり続けている感じでしたね」

 由「選手たちの中で徹底されていたから、試合の終盤に強かったんだろうね。丸選手も声を出すタイプ?」

 丸「声は出すと思います。巨人でも声出して大丈夫ですか?(笑い)」

 由「全然、大丈夫だよ(笑い)。巨人に入ってからは選手とそんな話はした?」

 丸「勇人さんに『広島はどんな感じなの?』と聞かれたり、僕は逆に『ジャイアンツはどんな感じですか?』と聞いたりもします」

 由「そういう話をするだけでも大きいと思う」

 丸「なるべくいい方向に持っていけたらいいですね。そういうやり方もあるというか、自分の中の引き出しの一つに持っているだけでも、違うと思いますし」

 由伸氏「今回、3連覇中のチームからFAでジャイアンツに来てくれた。俺が『来てくれた』というのおかしいか…。正直、自分だったら移籍はしなかったと思う。環境を変えるのが好きではなかったので」

 丸「自分の中でいろいろと考えることはたくさんあったんです。僕も環境を変えるのがあまり得意ではないんですが、カープの野球しか知らなかったので、他のチームの野球を知ることで野球選手としての引き出しが増えるというか、また見方が違ってくるのかなと思ったりしました」

 由「当然、主軸として期待されているけど、責任感や重圧はどう感じる?」

 丸「正直、ユニホームを着るまではどうなんだろうというプレッシャー、不安な部分はいろいろと考えたりしました。でも、環境によってプレースタイルを変えるとかできないタイプですし、『今までやってきたことを出すしかないな』と思ってやってます。ダメなら2軍で練習するしかないです。そういう世界だと思ってやっています」

 由「丸選手は本当に楽しそうに野球をやっているなと感じていた。自分は感情を表に出さなかったので、うらやましいなと思うこともあった。スタイルは一切変える必要はないよ」

 丸「はい」

 由「ところで、打席の中では何を意識している?」

 丸「まずは打ちにいくという気持ちで入るんですけど、ケースによっては『ここはまともには来ないだろう』と考えるようにもなりました。そういう時は一歩戻って『落ち着いて入ろう』と。昨シーズンは特にうまいことできました」

 由「理想の打者として結果は残せている? それともまだ理想とは違う?」

 丸「これでいいという満足はないので、改善するところはたくさんあると思います。三振の数はもう少し減らせたらと思います」

 【同じ千葉県出身の2人には、運命的な接点がある。話は98年、由伸氏の入団1年目に遡る】

 丸「僕が小さすぎて覚えてないんで、父から聞いた話なんですが…。初めて東京ドームに見に行った試合で由伸さんは大野豊さん(広島)からホームランを打ったんです」

 由「え、本当に? 自分が新人のときだね。その頃は9歳かな? へえ~」

 丸「その後もちょくちょく見に行ってました。川相さんが代打でホームランを打った試合も見ました。なかなか見られないですよね…。失礼ですけど(笑い)」

 由「僕も川相さんと一緒にやっていて、ホームランの記憶はないなあ(笑い)」

 丸「代打でホームランだったので、すごく覚えています」

 【由伸氏のホームランに魅了され、巨人は次第に憧れとなった。あれから21年。丸はジャイアンツの一員になった。3月29日の開幕戦、相手は古巣・広島だ】

 丸「キャンプではこれから徐々に強度を上げていきますが、ある程度任されている部分もあるので、まずは数をたくさん打ちたいですね」

 由「開幕戦はいきなり広島。変な意味じゃなくて、マツダスタジアムがどんな雰囲気になるのかは楽しみな部分はある。(人的補償で移籍した)長野もいる。注目カードになる」

 丸「まあ、注目されると思ってましたし、開幕戦を広島でやるのも分かっていた中での移籍なので。自分の中では、温かく迎え入れてもらえると思ってはいません。でも自分の中ではジャイアンツの一員ですから、そこはチームが勝てるように、いい準備をしないといけない。そこはやっぱり結果の世界ですから」

 由「ジャイアンツはどうしてもそういうところがクローズアップされるチームなのでね。そこは気にせずね」

 ◆高橋 由伸(たかはし・よしのぶ)1975年4月3日、千葉県生まれ。43歳。神奈川・桐蔭学園、慶大を経て97年、巨人を逆指名してドラフト1位で入団。1年目からレギュラーとして活躍し99、07年にベストナイン。98年から6年連続を含むゴールデン・グラブ賞7度。04年アテネ五輪日本代表。15年は選手兼任打撃コーチ、16~18年は巨人第18代監督。通算1819試合に出場し、1753安打、321本塁打、986打点。打率2割9分1厘。右投左打。今年からスポーツ報知評論家。

 ◆丸 佳浩(まる・よしひろ)1989年4月11日、千葉・勝浦市生まれ。29歳。千葉経大付では高校通算49本塁打を放ち2年夏、3年春に甲子園出場。07年高校生ドラフト3巡目で広島入団。17、18年と2年連続でセMVPに輝き、13年から6年連続ゴールデン・グラブ賞、3年連続ベストナインを受賞。177センチ、90キロ。右投左打。年俸4億5000万円(推定)。

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