【巨人】坂本工宜、4人ピシャリ!育成から開幕1軍へアピール

スポーツ報知
7回から登板、ダイナミックなフォームで打者4人を無安打に抑えた坂本工(カメラ・安藤 篤志)

◆オープン戦 巨人3―6楽天(23日・那覇)

 プロ野球のオープン戦は23日、沖縄県内で3試合が行われて開幕。新生・原巨人は楽天に3―6で敗れ、黒星発進となったが、輝きを放ったのが育成3年目の坂本工だ。7回に4番手で救援すると、回またぎの熱投。1回1/3を無安打無失点に抑え、支配下登録へまた一歩前進した。育成ドラフトで入団した投手が支配下登録即、開幕1軍となれば、巨人では史上初。大志を胸に24歳がアピールを続ける。

 手応えが、徐々に自信へと変わりつつあるのだろう。登板後の坂本工は大きくうなずいた。

 「内角の直球を効果的に使いながら、勝負球のスライダーで勝負できた。球速ではなく、キレで勝負するタイプ。今日はそれを出せました」。7回から4番手で登板。オコエを低め143キロで左飛に打ち取ると、1死から味方の失策で走者を出したが、続く山崎はスライダーで見逃し三振。小林の二盗阻止で切り抜け、8回先頭の卓丸はスライダーで空振り三振に斬った。

 背番号006。キャンプ1軍メンバーの中で唯一の育成選手ながら“1軍デビュー戦”となった16日の韓国・サムスン戦(那覇)で3回1安打1失点と、ベンチの信頼は日に日に強くなっている。宮本投手コーチも「地道に結果を出している。開幕まで(1軍に)残れれば、背番号も軽くなるかもしれない」と示唆。育成入団した投手が支配下登録即、開幕1軍となれば巨人では史上初だが、この日の17球で現実味を帯びてきた。

 入団以来、ファームの休養日には決まって早朝の新幹線に乗って兵庫の「ベースボールメディカルセンター」へ向かい、体のメンテナンスや動作解析による改善点のあぶり出しを行ってきた。現地には5時間ほど滞在し、寮の門限までに帰京する。文字通り無休のハードさに加え、年俸の低い育成選手にとって1回につき往復3万円を超える交通費は大きな出費だった。それでも支配下の扉をこじ開けるために、入団時の支度金や、大学時代の貯金を切り崩してやり繰りしてきた。

 関学大の準硬式野球部出身という経歴は、硬式のエリートが集まるプロ野球界では異色だ。本人は「特に苦労したことはないです。(準硬式球より)縫い目が高くて指をかけられる」と笑うが、周囲との実力差を埋め、そして追い越すために、人知れず努力を重ねてきた。チームスタッフによれば「球のホップ率が(昨季の)2軍の投手では一番良かった」というが、伸びとキレのある球は、たゆまぬ努力によって磨かれた。

 そんな貪欲な姿を、原監督も「彼の精神状態を、現役が続く限り持ってもらいたい。ひたむきさ、ハングリーさは素晴らしい」とたたえた。今季初のオープン戦には、9287人が詰めかけた。坂本工にとって経験のない大観衆だが「お客さんがたくさんいるほうがハイになれる。準硬式出身でも、プロの世界でやれると証明したい」と頼もしかった。4万5000人の前で投げる日も、そう遠くはない。(尾形 圭亮)

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