【巨人】前2軍監督の川相氏 イースタン開幕戦観戦記「東京Dを目指して必死に鍛錬を」

スポーツ報知
2回、四球での出塁から同点のホームを踏みナインに迎えられる北村

◆イースタン 巨人2―3日本ハム(16日、ジャイアンツ)

 巨人前2軍監督の川相昌弘氏(54)=スポーツ報知評論家=が16日のイースタン・リーグ開幕戦、巨人対日本ハムをG球場のネット裏から見届け、観戦記を寄せた。イースタン4連覇中のチームは2―3と競り負け、黒星発進となった。昨年まで指導していたヤングGの姿は、川相氏の目にどのように映ったのだろうか。(構成・加藤 弘士)

 まずは最も印象に残った選手を挙げたい。高卒2年目の湯浅大だ。「1番・遊撃」でスタメンに名を連ね、1回裏に先頭打者として打席に立つと、バーベイトの初球147キロストレートを見事に左翼線へ二塁打を放った。2打席目は3回先頭。またも初球ストレートを振り抜き、左中間二塁打をマークした。

 2打席連続のツーベース。開幕戦に1番打者として先発起用されたことに対して、「やってやるぞ」という意気込みが感じられた。アグレッシブな姿勢が際立つ打席だったと思う。

 湯浅は群馬の健大高崎から17年ドラフト8位で入団してきた。ルーキーイヤーだった昨年も、野球に取り組む姿勢が積極的で、私たち首脳陣の助言に対して「何か吸収してやろう」という雰囲気を持った選手だった。まだ19歳。この日の試合に出た巨人の選手では一番若いが、強い向上心を持っている。

 武器は俊足。守備にもスピード感がある。まだまだ雑な部分はあるが、想像を超えた守備範囲まで球を追いかけ、飛び込んで捕って、がむしゃらに送球したりする―そんな魅力がある。

 身長172センチはプロ野球選手としては小柄かもしれない。私も176センチと大きくなかった。ドラフト4位で入団し、投手から内野手に転向した頃、1軍の内野陣には河埜さん、中畑さん、篠塚さん、原さんらがいた。大きくてパワーもすごくて、衝撃だらけだった。篠塚さんは同じくらいの身長だったが、打撃も守備も特別な技術を持っていて、これまた衝撃だった。

 でも、ただ衝撃を受けているだけじゃ意味がない。この人たちと対等に戦うためには、何をしなければいけないのかを考えた。1年目、一生懸命に基本練習を繰り返した。2年目のイースタン開幕から1か月、打率4割と結果を残し、1軍に上がることができた。毎日、自分のやるべきことを反復して、予習と復習をこなしていけば、この世界は短時間でも成長できる。

 湯浅は昨季から「なんとしてもうまくなるんだ」という気迫のようなものが感じられた。今後も自身の持ち味であるスピードを最大限に生かすことを考え、勝負できるようにしてほしい。

 「5番・三塁」で先発出場した大卒2年目の北村拓己も、いい働きを見せていた。この日は1点を追う2回先頭の第1打席で四球を選び、同点のホームを踏むと、4回先頭、7回先頭と逆方向のライト前へヒットを放った。

 北村はスピードで勝負するタイプではないが、打撃のしぶとさや逆方向に打つ技術がある。バントやエンドランもうまい。自分で考えて、特長を生かそうという意思が感じられる。

 守備では送球がいいので、しっかり捕球できれば確実にアウトにできる。今年は1軍でも一塁を守ったり、内野のどこでも守れる貴重な存在だ。今春は紅白戦やオープン戦でも渋いヒットを打っていた。チームバッティングができるのが持ち味なので、使いたい側のリクエストにいつでも応えられるように、攻守でしっかり準備をしておけば、おのずとチャンスは来る。

 奮起を促したいのは2番を任された重信だ。足の速さだけでいえば、チームでNO1の力がある。しかしキャンプ中盤で2軍に降格し、1か月以上がたつ。この日も1点を追う初回無死二塁、カウント2ボール1ストライクから捕邪飛に倒れた。この回は結局、無得点に終わった。走者を進めておけば、点が取れたと思える場面だった。

 大卒4年目。確かにヒットをたくさん打つことも重要だが、もっと自分の置かれている立場や、何が求められているのかも考えてほしい。重信は1軍でも1、2番を打つ可能性がある選手だ。最低でも走者を進められるような打撃を心がけてほしい。意識してゴロを打てるようになるのも、技術の一つだ。自分には何が求められているのかを知り、実行する姿をもっともっと見せるべきだと思う。

 プロの世界は、首脳陣に「この選手は必死にチームに貢献しようと意識して結果も出してくれる」と思わせれば、試合に出られる。厳しいようだが、意識して引っ張ってゴロを打てるまで、技術を追究してやらないと、プロの世界では生き残っていけないと私は思う。

 2軍は当然、育成が大事だが、1軍でも2軍でも野球をやる以上、常に「勝負」というものがつきまとう。チームの勝利はもちろん、投手対打者という1対1の「勝負」、あるいはチーム内の「競争」もある。

 負けたくない。絶対に俺は勝つんだという気持ちは常に持って、やらなくてはいけない。勝たなくてはいけないのは、巨人軍の伝統だ。ファームであろうと、勝負に勝つんだという執念を胸に、選手には取り組んでほしい。

 そしてファンの皆さんには、球場に来ていただき、ファームの選手に声援を送っていただきたい。声援は力になる。ヤジも2軍だと、本当によく聞こえる(笑い)。厳しい言葉にも、悔しかったら頑張るしかない。

 2軍で汗にまみれる選手が徐々に成長して、1軍でプレーする姿こそ、ファンの皆さんが楽しみにしている光景だと思う。東京ドームの大舞台で輝く瞬間を目指して、必死に鍛錬を重ねてほしい。一人でも多くの若手が1軍で活躍することを、心待ちにしている。

 ◆北村 拓己(きたむら・たくみ)1995年8月29日、金沢市生まれ。23歳。星稜では3年夏に主将として甲子園出場。亜大では3年秋は三塁手、4年秋は遊撃手で東都大学リーグベストナイン。4年時に主将。3年時に大学日本代表。17年ドラフト4位で巨人入団。昨季は1軍で1試合のみに代打出場し、1打数無安打。181センチ、88キロ。右投右打。年俸840万円。

 ◆湯浅 大(ゆあさ・だい)2000年1月24日、群馬・富岡市生まれ。19歳。小2で野球を始め、富岡ボーイズを経て、健大高崎では主に「1番・遊撃」。2年秋から主将を務め、高3時の17年にはセンバツ8強。同年ドラフト8位で巨人入団。昨季はイースタンで18試合に出場し、打率1割3分3厘。1軍出場はなし。172センチ、73キロ。右投右打。年俸520万円。

 ◆川相 昌弘(かわい・まさひろ)1964年9月27日、岡山市生まれ。54歳。岡山南高では投手として甲子園に2度出場。82年のドラフト4位で巨人入団後、野手に転向して遊撃手のレギュラーとして活躍。04~06年は中日でプレー。通算533犠打は世界記録。ゴールデン・グラブ賞6度。現役引退後は中日のコーチ、2軍監督、巨人の2軍監督、1軍ヘッドコーチ、3軍監督などを歴任。今年からスポーツ報知評論家。

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