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「まだ70点」引退の巨人・杉内が後輩の今村に託した思い「もっと勝てる」

2018年9月13日11時24分  スポーツ報知
  • 今年1月、自主トレで笑顔を見せる杉内と今村(左)

 巨人の杉内俊哉投手(37)が12日、現役引退を発表した。15年10月に受けた球界に前例のない股関節の大手術、その後に発症した左肩痛などケガと戦い、最近3年間1軍登板なしだった。

 「股関節の軟骨がゴリゴリする音が聞こえる」「腕の骨を真っ二つに折られる感じで、痛くて肩が上がらない」「まさか肩が痛くなるとは思わなかった」「筋肉をはがすような注射をしても良くならない」「投げられないのはつらい。野球選手じゃない」。これらは長期のリハビリ生活で、杉内から聞いた言葉だ。どれほど過酷で苦しい時間だったか。でも、それを他の選手の前では見せず、努めて明るく振る舞っていた。

 昼間にG球場でトレーニング、夜は可能な限り1軍の試合をテレビで見て後輩を応援した。「キャンプ中はノブとずっと一緒にいたからね」と特に思い入れが強い投手の一人が、同じ左投手で、G球場のロッカーが隣の今村信貴投手(24)。今季は6月から1軍の先発に定着してここまで自己最多の5勝(2敗)。プロ初完封を飾るなど、飛躍のシーズンになっている。

 今村は昨オフに痛めた脇腹痛の影響もあり、今年2月のキャンプは杉内と同じ3軍だった。1か月間、杉内に密着マークし、質問しまくった。普段の杉内は「無責任なことはできない。基本的にはコーチがいるから」と自ら積極的に技術指導するというより、聞かれれば答えるスタンス。今村の貪欲な姿勢に、真剣に考えて助言した。

 特に熱心に聞かれたのが、伝家の宝刀・スライダーについて。杉内は「直球が100%の力なら、スライダーは120%の力で腕を振ったほうがいい」と金言を贈り、コツを伝授。今村はスライダーの精度が向上し、投球の幅が広がった。でも杉内は満足していない。

 「もともと直球は力があった。カーブもフォークも投げられるし、あれだけ左打者の内角をシュートでガンガン攻める気持ちの強さもある。あとはスライダーだけだよね。前よりは良くなったけど、まだ70点くらいかな。もっと打者を崩せるようになって欲しい。150キロ近い真っすぐがあるから、球速ももう少し欲しいかな。スライダーでポンポン空振りとれたらまあ楽になる。10勝じゃ終わらない。12勝、15勝ともっと勝てる投手になれると思う」

 今村に杉内のこの言葉を伝えると、「ありがたいですね。うれしいです。前までスライダーは0点だと言われていたので。もっと練習します」と話していた。

 杉内は通算142勝、投球回数2091回1/3を上回る2156奪三振、通算防御率2・95など輝かしい実績を誇る。「ノブには頑張って欲しいね」。今村のさらなる成長に期待し、後輩に思いを託し、現役生活にピリオドを打った。

     (片岡 優帆)

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