兄アウォーディーの思いも背負い…種牡馬となったラニの今 初年度から好調の理由

スポーツ報知
アロースタッドにけい養されているラニと、担当の菊谷陽平さん

 「皆さんが思っている、怪獣的な感じではないですよ」。菊谷陽平さん(39)が放牧地に近寄ると、ラニが甘えた顔で柵の上から顔を出してきた。北海道新ひだか町にあるアロースタッド。ここに、種牡馬ラニはけい養されている。

 兄の思いは届いているだろうか。中央と地方で重賞5連勝をマークし、2017年にはともにドバイワールドCに挑戦した半兄アウォーディー(父ジャングルポケット)が今月、放牧先で右飛節を骨折して安楽死となった。ひとあし早く現役を引退していた弟は、無事に種牡馬1年目のシーズンを終え、のびのびと過ごしている。

 初年度から118頭の種付けを行った。37頭の種牡馬が在籍するアロースタッドでは、シニスターミニスター、ビッグアーサーに次ぐ3番目の数。「初めてのうえに100頭近くもこなしたら疲れが出てくる馬もいるのですが、まあ、元気ですね。疲れたかな、という時期も一瞬ありましたが、全然元気です」と、担当の菊谷さんは話す。

 これだけ多くの牝馬を集めたのは予想外だった。「何かありそうな馬、っていう魅力はあるんじゃないですかね。そういう子を出すかもしれない、という。武豊騎手やムーア騎手も『能力はすごい』って、現役の時に言っていたじゃないですか。なかなか自分のレースでは見せなかったけれど、それが子供に伝われば」と期待を寄せた。

 2016年にUAEダービーを制するなど、日本調教馬として初めて米3冠にフル参戦。その能力はもちろんだが、「クレイジーホース」と呼ばれた荒い気性も魅力の一つだった。「ファンからすれば、ラニと同じような個性派が生まれてくれば楽しいでしょうね」と菊谷さんは笑った。

 初年度から好調の理由を松木優場長(53)に聞いた。理由は2つあり、1つ目は血統面。「母がヘヴンリーロマンスですし、きょうだいもみんな走ってるので。それにタピット産駒ということで、今、タピットって人気になっていますよね」。2つ目は50万円の種付け料で「血統がいいですし、(ラニ自身の)馬格も良く、それで50万円なら手頃なのだと思います」と分析した。

 種牡馬は個人所有とシンジケートの2パターンに分かれ、同牧場ではシニスターミニスター、ビッグアーサー、ワールドエース、バトルプラン、ディーマジェスティがシンジケートを組まれているが、ラニは前者。「シンジケートを組むと割と頭数を確保できるのですが、個人所有の種牡馬は産駒が走らないと、なかなか頭数を確保できない。ラニは個人所有ですが、すごく健闘しています」と松木場長。初年度から118頭を集めたのは大きな期待の表れだ。

 産駒がデビューするのは2021年。ラニ同様、世界で活躍する日が待ち遠しい。(石野 静香)

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