【ジャパンC「3冠牝馬ガラスの靴」<下>】アーモンドアイ、世界一へ調教用蹄鉄も進化

スポーツ報知
秋華賞調教時のO型(右)からさらに改良された右前脚の蹄鉄(左)(ノーザンファーム天栄製作、牛丸さん製作のものは装着中)

◆第38回ジャパンC・G1(11月25日・芝2400メートル、東京競馬場)

 11月2日、アーモンドアイのジャパンC参戦が正式に決まった。馬は福島県のノーザンファーム天栄で放牧中。管理する国枝栄のiPadに同牧場の場長・木実谷雄太から連絡が入り、装蹄師の牛丸広伸(43)は厩舎に呼ばれた。トラブルを抱えている右前脚の調教用の蹄鉄に関する相談とアドバイスだった。『チーム国枝』の考えは一致。牛丸はその後も木実谷と画像をやり取りしながら意見を交換した。「蹄と脚もとの保護のために『あの子にはこれが必要だ』と」

 秋華賞の調教では、従来のU字型の空いた部分をつなげた蹄鉄を使用。木実谷はそのO字型をさらに改良した。傷つきやすい蹄球(※)部分の鉄を短くし、当たらないように細工。さらに負荷を楽にするため、下部をつなげた。「物理の授業だな」と牛丸は笑いながら理論を説明する。「本来ならば4つの点で支えるけれど、一部をなくしたので3点になる。そうなると立つのが苦しい。下をくっつけることで、なるべく全体で立てるように」。蹄球にストレスを与えないよう工夫し、負荷のバランスにも考慮した。

 写真は木実谷が考案して製作された蹄鉄。形は同じだが、牛丸は1枚の鉄板から作り上げた。走った時にかかる1トンの負荷でも曲がらない硬度の高い素材で、切るのは大変だった。装着して行った1週前追い切りを終え、「この蹄鉄がなかったら調教できていなかったかもしれない」と思うほど効果を感じている。

 「国枝厩舎の管理も超一流だし、ノーザンファームの管理も超一流。スタッフとのやり取りがなかったら、ここまで活躍できていない」。そう謙虚に語る牛丸ももちろん、その一員だ。プロフェッショナルたちによって誕生した、調教用の“新・蹄鉄”。美浦を出発するその時まで脚もとを支える。=敬称略=おわり(取材、構成・石野 静香)

※蹄球…蹄のかかと部分のことで弾力性があってゴムのように柔らかい。

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