•  スポーツ報知のWebサイト限定コラムがスタートしました。最前線で取材する記者が、紙面では書き切れなかった裏話や、今話題となっている旬な出来事を深く掘り下げてお届けします。皆さんを「ほーっ!」とうならせるようなコラムを目指して日々配信しますので、どうぞお楽しみください。

神様は見ている、天皇杯制したC大阪・山村のその真摯な姿

2018年1月10日16時0分  スポーツ報知
  • 天皇杯を掲げて喜びを爆発させる柿谷(中央)らC大阪イレブン

 国内サッカーの2017年シーズンは年明けの1日、C大阪の天皇杯優勝で幕を閉じた。3日の本紙では延長前半5分に決勝点を決めたMF水沼宏太の活躍(日産自動車などで活躍した父・貴史さんとの親子制覇)を報じたが、もう一人、忘れてはならない働きを見せた選手がいる。1ゴール1アシストのMF山村和也。前半に先制された試合を後半20分の右足弾で振り出しに戻し、延長では絶妙のクロスで水沼の勝ち越し点を演出した殊勲者だった。

 開幕前に守備的MFから前線へとコンバートされ、シーズン中盤までに8得点。昨年5月末の当欄で「心技体に甘いマスクも備えた4拍子」と賛辞を送ったが、その後8月と10月に2度も左膝を痛め、突然ゴールから遠ざかってしまった。「体」と「技」はピークから遠い状態になったわけだが、それでも「心」だけは万全を保ち続けるのが山村の一流たるところ。けがについて聞かれることを嫌うアスリートも多いが、山村はどんなタイミングの取材にも、誠実だった。

 シーズン中盤には、日本代表に選出される可能性がしきりに取りざたされた。代表チームが8月末にロシアW杯出場を決め、迎えた10月の親善試合。「テストの意味合いも含めて今度こそ代表入りする」とみた担当記者陣はメンバー発表を待たず、すでに選出が決まったかのように、山村を質問攻めにした。ところが結果は落選。一夜明けた山村に「申し訳なかった」と声をかけると、気分を害した様子はみじんも見せず、「また頑張れってことだと思います」と答えてくれた。

 迎えた元日。横浜Mとの一戦を終えた山村は帰り際、照れくさそうに「きょうは結婚記念日なんですよ」と漏らした。流通経大に在学していた12年1月1日、22歳で女優の三村恭代さんと結婚。その愛妻と長男、長女が観戦する前で、2得点に絡んでの自身初優勝だった。12~15年には常勝・鹿島に在籍しながら無縁だった元日の決勝戦。昨年11月のルヴァン杯決勝も終盤数分間の出場で大きな貢献はできなかったが、ついに自らの活躍でタイトルをつかんだわけだ。

 「目標としている」と意欲を見せていた日本代表入りを逃しても、直後の言葉通り、「また頑張った」山村。その真摯な姿を、神様は見ていたのかもしれない。私事ながら、記者としてサッカーを取材するのはこの決勝戦が最終日。最後にいいものを見せてもらった。(中村 卓)

コラム
注目トピック