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思わずつぶやく、「どんだけ良い人やねん、イニエスタ…」

2018年9月19日16時0分  スポーツ報知
  • 公開練習後のファンサービスで、子どもに頭をタッチされても笑顔の神戸MFイニエスタ
  • 本日オープンのイニエスタバルに飾られたワイン樽
  • パスを通すイニエスタ

 今年からサッカー担当になり早9か月が経った。もとは野球担当だったため、最初はサッカーのシステムはおろかルールすら怪しかったが、W杯やリーグ戦を経て徐々にその面白さが分かってきたところだ。そんな中でも何よりラッキーなのが、担当するクラブのひとつであるJ1神戸に、今夏からスペイン代表のMFアンドレス・イニエスタ(34)が加入し、その世界的プレーヤーを取材する機会に恵まれたことだ。本人やその周囲から日々話を聞く中で「どんだけ良い人やねん…」と思わずつぶやきたくなった話の数々を紹介したい。

 イニエスタの持ち味は、吸い付くようなボールさばきと正確すぎるパスだろう。サッカー経験のほとんどない私から見ても、感動するレベルだ。そんな背番号8がチームに加わってから神戸の試合はホームはもちろん、アウェーでもチケットの完売が相次いでいる。クラブ関係者は「思っていた以上だった。ルックスがウリというタイプの選手でもないし、得点を決めるわけでもない。サッカーが分かる層には支持があると思っていたけど…」と驚きの色を隠せない。外見でもない、豪快なゴールでもない。そのドリブルひとつで、パスひとつでお客さんを呼べる、そのプレーが見たくてスタジアムが満員に埋まる、今の日本のサッカー界においては本当に貴重な存在といえるだろう。

 ピッチを出たイニエスタはとても真面目なナイスガイだ。1日の札幌戦では初めて北海道に上陸。その機内で用意された席はなんと他の選手と同様、エコノミークラスのシートだった。バルサ時代の移動はチームのプライベートジェット。それでもイニエスタは機内でDF藤谷らと笑顔で写った写真を自身のインスタグラムにアップするなど、文句を言うどころか、むしろ移動自体を楽しんでいたという。神戸とバルサで練習環境も大きく違いがあるはずだが、クラブ関係者は「不満は聞いたことがない。人間ができている。聖人君子(せいじんくんし)みたいな人」とその人柄を評す。

 これまでの数々の実績を勝ち誇ることもせず、異国の地でチームになじもうとする姿勢もハンパない。もともとはロシアW杯が終わり、休暇を取った8月からチームに合流予定だった。しかし「早くチームとして戦いたい」とほとんど休暇を取ることなく7月18日に来日。チームにすぐに合流し、22日にデビューを果たした。来日した翌日は神戸市内のクラブハウスで早速自主トレを行ったあと「帰ってくる監督や選手をここで出迎えたい」とアウェーの長崎から戻ってくるチームを待っていたという。チームに早く溶け込もうと、年上年下関係なく選手や関係者にも自分から積極的に話しかけ、帰り際には報道陣にも手を振ってくれる。そんな姿には思わず「どんだけ良い人やねん」と言いたくなる。

 ファンサービスにもその人柄がよく表れている。来日時の関西空港や、月に1回行われる公開練習の際など、クラブ関係者が「このへんで…」と止めても「まだ大丈夫」とファンにサインを続けることがよくある。あらかじめ予定されていた時間をオーバーすることもしばしば。8月26日の横浜M戦(ノエスタ)の後も、敗戦の悔しさから報道陣には無言を貫いたが、その後居合わせたファンに撮影を頼まれると、嫌な顔ひとつせず応じていた。目の前のファンを大事にしようという強い思いが伝わってきた。

 神戸は今、新監督にフアンマヌエル・リージョ氏(52)が就任することが決まり、大きな変革期を迎えている。その中心はもちろんイニエスタだ。来日して少し経った頃、イニエスタはこんなことを話していたという。「このチームは1000%良くなる。アジアを目指せるチームに1000%なる」と。その言葉が確かなら、現在は8位と悔しい結果が続いている神戸がこれからどのように変わっていくのか、楽しみで仕方ない。チームの変化とともに、今後もイニエスタの「どんだけ良い人」な一面はもちろん、様々な表情も伝えていけたらと思う。(記者コラム・筒井 琴美)

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