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川口能活に育てられたのは、後輩GKだけではない 14日引退会見

2018年11月13日12時3分  スポーツ報知
  • 川口能活(右)

 元日本代表GK川口能活が4日、今季限りでの現役引退を表明した。

 96年アトランタ五輪でブラジルを破るマイアミの奇跡、W杯4大会連続出場、GKで日本代表最多116試合出場。数え切れない功績と伝説を残したレジェンドの引退を惜しむ声が上がる。三浦知良、楢崎正剛、中沢佑二、中村俊輔、中村憲剛…。コメントした顔ぶれを見るだけでも川口の偉大さが伝わるが、曽ケ端準や中村航輔ら後輩の言葉にも実感がこもる。GKを花形のポジションにした、その背中に“育てられた”のだろう。職種は全く違うが、彼らと同様、記者である私も川口に“育てられている”1人だ。

 8年前の2010年。記者1年目で磐田担当に配属され、4か月。南アW杯メンバーにサプライズ選出された川口の原稿で、初めて1面を書かせてもらった。5か月後にはナビスコ杯(現・ルヴァン杯)で初めての優勝原稿と独占手記取材に協力してもらった。その後も実力・人気・知名度抜群の守護神は何かと見出しになることも多く、原稿量も増えた。行数を埋めるだけで必死の若手時代。存分に鍛えられた。

 それでもネタに困ることはなかった。日本代表や海外クラブも含めて豊富な経験を持つ川口は頭も切れ、コメントもさえた。助けられたことは数え切れない。それは、今も同じ。企画やネタで行きづまると、相模原の練習場を訪ねるのがお決まりだった。「何しに来たんだよ」。川口はイタズラな笑みを浮かべた後、10歳も下の私と真摯(しんし)に向き合い、知恵とヒントと、時々天然なボケ(11日の試合後もロッカールームに携帯電話を忘れていた)を授けてくれた。取材が一段落つくと、各媒体の記事が話題になることも多かった。

 「〇〇新聞のあの人の書き方は、丁寧だよね」

 「あのコラム読んだよ。良かったね」

 サッカーに関する情報は隅々まで目を通していた。現役25年間で知り合った記者の名前は全て頭にインプットし、同業他社や私が書いた原稿の感想を聞かせてくれた。楽しく、学ぶ時間だった。プレー同様、真っすぐで、思いが詰まった記事が好きなように感じた。いつしか「能活さんに褒められるようなものを」とペンを走らせ、パソコンに向かうようになった。

 引退会見は14日に行われる。私にとって、長く見続けた取材相手の引退は、初めてのことになる。共に過ごせた時間に感謝し、褒めてもらえるような原稿で、新たなスタートを送り出したいと思う。(田中 雄己)

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