【二宮寿朗の週刊文蹴】技術委員長の代表監督就任「禁じ手」は今回だけに

スポーツ報知
就任会見で抱負を述べるサッカー日本代表の西野新監督(右)と田嶋会長

 西野朗氏の肩書が「技術委員長」から「監督」に変わった。バヒド・ハリルホジッチ監督の電撃解任もさることながら、こちらにも驚かされた。

 技術委員会の役割は〈1〉フル代表をはじめ代表強化や育成の指針を示す〈2〉監督を選定する〈3〉監督、代表チームをサポート及び評価する〈4〉指導者を養成する、などなど。言わば強化の中枢部だ。

 どうして評価や選定する立場の人に、後任を委ねなければならなかったのか。そもそも新しい監督は技術委員会に人選させるのが筋というもの。ハリルホジッチ監督に対する評価を踏まえてどんなサッカーをすべきか、そのうえでこの緊急事態を乗り切るために誰に託せばいいのか―。

 これまでもそうやって監督を決めてきたはずだ。従来のプロセスを“緊急事態だから”と言って踏まないのは、技術委員会を軽視する行為と受け取られてもおかしくない。

 西野氏の実績は申し分ない。アトランタ五輪でブラジル代表に勝利する「マイアミの奇跡」を起こし、G大阪の黄金期を築いた。だが2年前に技術委員長を任せた以上、西野氏にはロシアW杯までの経緯、本大会の結果と内容を踏まえて、日本サッカーのロードマップを提示してほしかったという思いがある。

 客観的かつ専門的、そして継続的に見ていくからこそ正しく評価できる。コロコロと交代させていいポジションではない。とはいえ決定した以上、文句を言っても始まらない。西野朗監督にはぜひこの緊急事態を乗り切ってもらいたいと思う。

 新しい技術委員長には、関塚隆氏が決定したようだ。代表チームをしっかりと評価できる、監督やチームに積極的かつ効果的に関与できる体制づくりを進めるべきである。技術委員会の強靱(きょうじん)化なくして、日本サッカーの発展はないのだから。技術委員長の代表監督就任。この「禁じ手」は今回だけにしていただきたい。(スポーツライター)

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