森保監督、初陣中止に「自然災害には太刀打ちできない」北海道胆振東部地震の被災者気遣う

スポーツ報知
停電で信号が消えた宿舎周辺を歩いて近くの公園に向かう(右から)浅野、槙野、青山、小林ら代表イレブン(カメラ・竜田 卓)

 日本サッカー協会は6日、同日未明に起きた最大震度7の北海道胆振(いぶり)東部地震による影響で、7日に札幌ドームで予定されていた国際親善試合の日本代表―チリ代表戦を中止すると発表した。国際Aマッチの中止は、東日本大震災の影響を受けた2011年3月以来で、チーム集合後の中止は初めて。この試合はロシアW杯後に就任した森保一監督(50)の初陣となる予定だった。前売り入場券は全額払い戻され、同協会にとっては5億円超(推定)の損失となるとみられる。

 札幌で初の合宿を行っていた森保ジャパンに震災が降りかかった。初陣のチリ戦を翌日に控え、就寝していた6日午前3時8分。最初は小さな揺れだったが、秒針が進むたびに揺れ幅が大きくなり、DF槙野は「(揺れが)すごかった」と、目を覚ました。FW浅野も「生まれて初めて感じるくらいの大きい地震だったので、びっくりしました」と跳び起きた。

 停電は北海道全域に及んだ。日本協会によると森保監督と選手らは安全確保、無事を確認する目的で午前3時30分過ぎ、食事会場として利用していた低層階の宴会場に集められた。その後も余震とみられる揺れが続いたため待機。最終的に部屋へ戻ったのは同6時だった。朝食は提供されたパンで済ませ、同8時には宿舎の自家発電が復旧した。

 被害が明らかになっていく中で、試合開催可否の協議が重ねられた。札幌ドームは破損等の被害はなく断水も免れたが、停電が復旧するメドが立たなかった。日本協会は午後5時過ぎに、「お客さま、選手、スタッフ、運営の方の安全。ライフライン、交通機関の大きな乱れなどで判断」し、11年3月以来となる国際Aマッチの中止を決めた。

 この日午後5時30分から、札幌ドームで予定されていた公式練習も中止になった。代替の場所探しに奔走したが移動などの都合がつかず、午後4時頃から宿舎周辺の散歩で体をほぐすにとどまった。森保監督は途中、選手を集めて中止を知らせた。「残念だけど、自然災害には太刀打ちできない」と無念さを感じながら、被災者に見舞いの言葉を向けた。

 「選手たちもいろんな思いを持っていると思う。まずは北海道の方に、苦しんでおられる方、傷ついておられる方の気持ちが少しでも穏やかに過ごしてもらえるように、日常の生活を過ごせるようにと思います」

 日本協会関係者によると、中止で被る損害は放映権料や入場料収入など推定で5億円超に上るという。チームは8日まで札幌に滞在予定だが、7日も練習ができる保証はない。コスタリカ戦(11日・吹田S)が行われる大阪への移動も不透明な状況にある。思わぬ形で初陣が延びた森保監督は、「我々はサッカーからしかサポートしたり、支えたりすることはできないが、心を寄り添わせているということをみんなで考えていきたい」と、前を向いた。(内田 知宏)

 ◆地震によるサッカーの中止・変更

 ▽04年10月30日(新潟中越地震) 新潟―柏→11月10日(国立)に延期

 ▽11年3月12日~4月20日(東日本大震災) Jリーグ戦、ナビスコ(現ルヴァン)杯の全試合(東日本大震災)→日程変更やカップ戦の大会方式を変更

 ▽11年3月25日(東日本大震災) 日本代表―モンテネグロ代表→中止

 ▽同29日(東日本大震災) 日本代表―ニュージーランド代表→国立から長居に変更して、Jリーグ選抜との復興支援慈善試合を開催

 ▽16年4月16日~6月19日(熊本地震) J1~J3リーグ戦のうち14試合→延期

 ▽18年6月23日~8月26日(大阪府北部地震) G大阪U―23ホーム戦3試合→万博からパナスタに変更

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