【二宮寿朗の週刊文蹴】残留争いを勝ち抜くための絶対条件

スポーツ報知
G大阪のファン感謝デーでオジェソク(中央右)にパイをぶつけられ、やり返す宮本監督(中央左)

 思わず声を出して笑ってしまった。ガンバ大阪のファン感謝デーを報じた17日付の本紙記事。イケメンの宮本恒靖監督が真っ白なパイを顔面に投げつけられたとか。掲載された写真は、呉宰碩にやり返して周囲の選手たちも笑っていた。クールなツネさんを選手たちがイジる。チームの雰囲気が良くなければ、こんな流れにはまずならない。

 ガンバは崖っぷちにある。監督交代後もなかなか上昇できず、自動降格圏の17位を抜け出せていない。しかしここにきてリーグ戦2連勝。残留圏内の15位まで勝ち点2差に迫っている。

 同様に最下位のV・ファーレン長崎も崖っぷちが続いているものの、15日の名古屋グランパス戦で8試合ぶりの勝利を収めた。ガンバとは3差だ。

 決してガチガチになることなくひたむきに勝利を目指す姿勢を見て、ダ・ゾーンの試合前インタビューで高木琢也監督が笑みをこぼして随分とリラックスしていたことを思い出した。この状況なら「悲壮感たっぷり」でもおかしくはないのだが、普段どおりの振る舞いが名古屋戦の4発を引き出したようにも感じた。宮本監督のパイも高木監督のリラックスもそこに一体感が映し出されていた。

 一体感をいかに生み出すか―。ちょっと昔の話になるが、01年に横浜F・マリノスが残留争いに身を置く中、松田直樹が選手全員に茶髪を呼び掛けてベテランから若手まで髪の色を染めたことがあった。「絶対やらないだろうなって思っていたヤツまでやってくれた。まとまる方法はほかにあったかもしれないけど、思いが一つになって残留できた」と、のちに松田は語っていた。

 今年の残留争いはまったく読めない。横浜や柏レイソルが巻き込まれ、中位以下のチームまで引き込んでいきそうな気配が漂う。監督も選手もスタッフも、そしてサポーターも。強固な一致団結のチームが必ずや生き残る。(スポーツライター)

サッカー

×