旭川実、内紛乗り越え逆転Ｖ３

◆全国高校サッカー　選手権北海道大会最終日　旭川実２―１道大谷室蘭（２１日、札幌厚別公園競技場）

　旭川実が道大谷室蘭に２―１で逆転勝ちし、３年連続７度目の優勝を飾った。前半２５分に先制を許すも、同３８分、ＤＦ江嶋直樹（３年）が同点ゴール。後半１８分ＭＦ山内陸（３年）の決勝弾で同校初の３連覇を成し遂げた。６月の全国高校総体道予選で４強に終わったチームが敗戦を機に奮起。おごりがあった“怒りん坊軍団”が、勝負強い集団に生まれ変わり逆転を呼んだ。同校は１２月３０日開幕の全国高校選手権（埼玉スタジアムほか）に出場する。

　厚別の空に、勝利を告げる長いホイッスルが響いた。芝に崩れ落ちる道大谷室蘭の選手の前で、旭川実イレブンは笑顔で抱き合い、喜びを分かち合った。同校初の３連覇に富居徹雄監督（４６）は「ホッとしたのが一番。高校総体で負けていたので（選手権は）勝たなきゃと思っていた」と大きく息を吐いた。

　“怒りん坊軍団”が生まれ変わった。１月に新チームが始動。全国高校総体８強、選手権道大会連覇を果たした昨年から主力５人が残るなど実力はあったが、指揮官が「すぐイライラする、勘違いした子どもだった」と振り返るように、試合中でも仲間同士で言い合うなど、まとまりを欠いていた。ＭＦ河合悠人（３年）は「出ていたメンバーと、そうでない人の考えに違いがあった」と話す。タッチ数やパスのタイミングをめぐり対立。相手以前に、敵は“チーム内”にいた。

　不協和音があらわになったのが、６月の高校総体（ＩＨ）道予選。準決勝で北海に０―１で敗れた。好機を生かし切れず自滅し「（総体は）２チームが出場できるし、どこかで勝てる気持ちがあった。自信が過信になっていた」とＤＦ西川知広主将（３年）。帰りのバスは誰もがうつむき、泣き崩れる選手もいた。目標としていたＩＨ道予選、プリンスリーグ、選手権の「道内３冠」が夢破れた瞬間だった。

　俺たちは王者じゃない―。選手の目つきは変わり、練習中も、相手を非難するだけでなく前向きな会話が増えた。慢心を、全員でぬぐい去った。「挑戦者という意味で、昨年のことを忘れた」（西川）。プリンスリーグでは３年ぶりの優勝。自信を持って、今大会に臨んだ。この日の２得点は、いずれもゴール前の混戦から。今大会初めて先制を許し、河合は「夏ならイライラして、そのまま負けていたかもしれない」。冷静に、しぶとく戦い頂点に立った。

　目標の全国４強へ、挑戦権はつかんだ。「高校総体に出られなかった分、全員で頑張りたい」と西川。３年連続の大舞台で、北海道王者の威厳を示す。（宮崎　亮太）