【湘南】チョウ監督独占手記…7年間厳しく一人一人と向き合ってきた 選手が報われてよかった

スポーツ報知
Jリーグ杯を手に笑顔の湘南・チョウ貴裁監督(カメラ・池内 雅彦)

◆JリーグYBCルヴァン杯決勝 湘南1―0横浜M(27日、埼玉スタジアム)

 湘南が横浜Mとの「神奈川ダービー」となった決勝を1―0で制して初優勝を果たし、賞金1億5000万円を獲得した。前半36分に東京五輪世代のU―21日本代表MF杉岡大暉(20)が決めた先制点を守り抜いた。前身の平塚時代の1994年度天皇杯以来の国内3大タイトルを獲得。湘南としては初タイトルとなった。就任7年目のチョウ貴裁(チョウ・キジェ)監督(49)がスポーツ報知に独占手記を寄せ、これまでの歩みと自身の指導者観を明かした。

 優勝しても泣かないと決めていた。ここまで僕は何度も(心が)ポキポキ折れていた。でも、ぎりぎりのところをみんなでやってきて、そういうところに思いをはせて泣いてしまった。選手たちが報われてよかった。

 今まで彼らにいろんなことを課してきたし、厳しいことも言った。でも嫌われたくないから言わないのは違う。組織、チームのために…と思って一人一人と向き合ってきた。この7年はかけがえのない時間だった。何も無駄なことはなかった。

 選手の本気度を感じた時、感極まって泣いたこともたくさんある。8月26日、3連敗で臨んだホームF東京戦。試合前、みんなに「このチーム好きか」と一人一人に尋ねた。本当は「好きなんだったらやることやれ」と言うつもりで聞いてみました。

 言葉を変えたとしても、3、4人目で同じことを言うと思っていた。でも、全員違うことを言ったんだよ、好きな理由を。(梅崎)司は「僕はここまで人のことを考えたことはなかった」と具体的に話してくれた。想像していなかったから、思わず同席していた水谷社長に「勝たせてやりたいです。彼らを」と言ってしまった。選手を勝たせてあげられない監督としての無力さを感じて、人として、彼らを勝たせてやりたいと思った。

 僕は、勝負師じゃないんだよね。監督としては甘いかもしれない。相手を蹴落とすという気持ちは全然なくて。指導、教育に携わっている人間だと思っている。かっこよく言ったら、“チョウさんと出会ってよかった”と思ってほしいなと、今日までやってきた。

 「湘南スタイル」は、よく「一生懸命走る」とか、「球際」とか言われる。他者に責任転嫁をせず、常に学ぶ意欲を持って自分が成長するためにやるべきことは全部やる。それが本質。このチームは、まだ発展途上。地域の中で全てを引っ張る存在にならなきゃいけない。100年かかるかもしれない。頂上はどこか見えないけど、少しでも近づきたい。(湘南ベルマーレ監督)

 ◆チョウ 貴裁(チョウ・キジェ)1969年1月16日、京都府生まれ。49歳。洛北高から早大を経て91年に柏の前身である日立製作所に入団。JリーグではDFとして柏―浦和―神戸でプレーし97年に引退。2000年に川崎アシスタントコーチ、04年にC大阪ヘッドコーチを経て05年から湘南へ。ジュニアユース監督、ユース監督、ヘッドコーチを歴任して12年に監督に就任し、今季は7季目。

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