【G大阪】なぜ遠藤はフィールドプレーヤー初の600試合出場をなしえたのか。クールな背番号7が持つ、執念にも似たレギュラーへの欲

スポーツ報知
前半、パスを出すG大阪・遠藤(7)

◆明治安田生命J1リーグ第32節 G大阪1―0湘南(10日・パナスタ)

 G大阪の元日本代表MF遠藤保仁(38)が、10日の湘南戦(パナS)でフィールドプレーヤー初のJ1通算600試合出場を達成した。この大台への到達は、けがの少なさ、けがをしても試合に出続けるというスタイルに起因する。さらにマイペースでクールな背番号7の印象とはかけ離れた、執念にも似たレギュラーへの欲があってなしえた数字だ。

 サッカー界で30代後半に差し掛かった選手は、常に世代交代の波と戦っている。遠藤とはいえ例外ではない。長谷川監督(現F東京)が率いていた昨季途中には、レギュラー落ちの危機を迎えたことがあった。7月8日の清水戦で前半のみの交代となると、次戦の29日・C大阪戦、8月5日の甲府戦はベンチで出場なしに終わった。

 当時37歳。気持ちが折れても不思議ではない。しかし遠藤は違った。練習で行われる紅白戦で若手中心の控え組に入ると、10歳以上も年の離れた選手たちをまとめ、「絶対に(レギュラー組に)勝つぞ」とつぶやいたという。そして守備では誰よりもボールに食らいつく気迫をみせ、レギュラー陣を圧倒。8月9日の広島戦から先発に復帰、再びポジションを奪い返した。

 「危機感は常にあります。年を重ねるごとに若くていい選手が出てきますし、世代交代と言われるのが当然の流れ。でも特に気にはしていないですし、パフォーマンスがよければピッチには立てる。そこを目標に常にやっているので。それは連勝中の今でも、数年前も同じような気持ちでやっている。これから先も、常に先発で出られるような気持ちでやっていければ、と思います」。この日の試合後には、こう話した。20年以上にわたってレギュラーの座を守り続けていても、今だに先発でピッチに立ちたいという思いには一切の陰りがない。

 G大阪、日本代表のチームメートとしてともにプレーしてきたMF今野は、そんな遠藤の“信奉者”だ。G大阪が不振に陥れば、やはり司令塔であり、チーム最年長でもある遠藤のプレーに非難が集まる。そんな風潮に「年取ったら、何試合か悪かったら、(力が)落ちた落ちたって言われるんですよ。でもしっかりみんなが適切なポジションをとって、中盤がいい形になって、前線も動き出せば、絶対に生きるんですから、ヤットさん(遠藤)は」。怒りすらにじませた声で、そう話していた。

 スピードやパワーに頼らず、卓越した戦術眼とパス能力で戦うプレースタイルのため、他の選手よりも年齢による肉体の衰えがプレーに与える影響は小さい。巧みなポジショニングや判断の速さ、正確な技術は、今季もG大阪で代わりのいない存在だった。600試合を成し遂げたこの日も「何歳になっても先発で出たいという思いがあるうちは、戦っていきたいと思います」と宣言。来季には名古屋の元日本代表GK楢崎の持つ最多出場記録631試合に挑む背番号7が、どうやって今後もレギュラーの座を守り続けるのか。39歳を迎える来季にも、楽しみは尽きない。(G大阪担当・金川 誉)

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