【二宮寿朗の週刊文蹴】「圧」と「熱」のホームアドバンテージ

スポーツ報知

 サポーターとスタジアムの力をもっと引き出せ―。ガンバ大阪を“V字回復”させた宮本恒靖監督はホーム最終戦(24日)に勝利して9連勝を飾った後のセレモニーでサポーターに感謝を伝えるとともにこう呼び掛けた。

 「広島の城福監督と話をした際、我々が1―0でリードした後『圧を感じて何もできなかった』とおっしゃっていました。後押しを受け、いつも勝てる試合をやっていきたい。一緒に戦い、圧をもっとつくっていただきたい!」

 宮本監督が7月下旬に就任して以降、ホームでは6勝2分けと一度も敗戦がなかった。パナソニックスタジアム吹田はピッチとスタンドの距離が近いプレミア風。ガンバのシュートが外れると、それこそ欧州のように「ウーッ!」の声が一斉に響く。これが次のシュートを誘うのだ。宮本ガンバがホームで一度も無得点で終わってないことと無関係ではないだろう。クールで知られる“ツネ様”がベンチ前で熱くなることもしばしば。スタジアムの雰囲気がきっとそうさせている。

 スタジアムの熱を結果に結びつけたと言えば、大混戦のJ2を制した松本山雅も同様である。

 相手を威圧するというよりも味方の背中を押しまくる感じか。歌い上げるメロディーが遠くの山々にこだまするようにスタジアムを包み込む。

 開幕から6戦勝ちなしともたつきながらも、アルウィン開幕戦となった4月1日の大宮アルディージャ戦に勝利して浮上していった。今季も地元では強かった。

 「俺だってあそこにいたらエキサイトするよ」と反町康治監督が語ったことがある。優勝を決めた17日ヴォルティス徳島戦の後にはスタンドと一体となって「アルプス一万尺」を踊って喜びを分かち合っていた。

 監督自ら呼び掛け、自ら溶け込む。ピッチの中と外。その共鳴と共感があって、「圧」と「熱」のホームアドバンテージがある。(スポーツライター)

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