【鹿島】世界よ安部裕葵を見たか!“柴崎ロード”へ、レアルからも点取る

スポーツ報知

◆クラブW杯 ▽準々決勝 鹿島3―2グアダラハラ(15日、UAE・アルアイン)

 【アルアイン(アラブ首長国連邦)15日=岡島智哉】アジア代表の鹿島は北中米カリブ海王者・グアダラハラを3―2で下した。FWセルジーニョ(23)のゴールで同点とすると、U―19日本代表MF安部裕葵(19)が衝撃のスーパーゴールを突き刺しトドメをさした。準決勝の相手は大会3連覇を狙う欧州王者Rマドリード。2016年大会決勝(2●4)以来の再戦に、安部は2得点を挙げた日本代表MF柴崎岳(26)の再現を狙う。

 世界にその名を轟(とどろ)かせるゴールが決まった。2―1で迎えた後半39分。得意のカットインでフリーになった安部は、狙い澄ました表情で右足を振り抜いた。美しい弧を描いたゴールはGKの頭上を越え、ネットに収まった。

 「あんなにきれいなゴールはプロ入り後初めて。結果を残せて良かった」。Rマドリードへの挑戦権をグッと手繰り寄せる値千金のゴールとなった。後半開始からの出場で試合の流れを一変させ、貴重なダメ押し点。U―19代表で10番を背負い、今季のJリーグ・ベストヤングプレーヤー賞に輝いた19歳のプレーは、まさに世界に衝撃を与えた。

 世界を知るDF内田は試合前に「若手には世界中のスカウトが見てる舞台だと意識して欲しい」と話していた。世界200の国・地域で放送される大舞台。会場には世界各国のスカウトがダイヤの原石を発掘するべく集まっている。16年大会では柴崎がレアルを相手に2ゴールを沈めるなど自身の能力をいかんなく発揮し、憧れの欧州へと渡った。

 安部はレアル戦での柴崎のゴールを広島・瀬戸内高の寮で見ていた。当時高校3年生。「(柴崎のゴールは)それはもう、めっちゃ騒ぎました。周りから『お前、このチームに入るのかよ』って言われて」。それから2年。自らのゴールで鹿島にとってリベンジの機会を切り開いた。「違和感ですね」と苦笑いを浮かべるが、海外志向の強い安部にとっては柴崎と同じ道をたどるチャンスでもある。「格上というのは分かっている。我慢する時間が長くなると思うが、我慢するのは日本で一番得意なチーム。みんなで勝利に向かって頑張りたい」と力を込めた。

 16年の対戦は、結果だけ見れば延長戦の末に一歩及ばなかった「善戦」。それでもDF昌子は「明らかに舐められていた」と振り返る。「先に向こうが1点取ってからは、おちょくる感じでパス回ししてきた」。鹿島はその敗戦を「善戦」ではなく、舐めた相手に4失点を喫した「惨敗」と捉え、血肉としてきた。「2年前は、『よっしゃレアルとだ』っていう気持ちがあった。でも今は『絶対に勝ってやる』という気持ち」と昌子。「よくやった」の評価はもういらない。全てをぶつけ、勝利だけをつかみにいく。

 ◆柴崎とレアル戦

 16年12月18日のクラブW杯決勝、Rマドリード戦(横浜国際)に先発。0―1の前半44分、左サイドで土居がドリブルを仕掛け中央に折り返すと、柴崎が左足で同点ゴールをたたき込んだ。さらに後半7分、相手DF2人をかわしながら、強烈な左足ミドルシュートで逆転。一時リードしたが、わずか6分後。PK献上からC・ロナウドに同点弾を許した。延長戦までもつれ込むも、ロナウドに2点を決められ敗戦。強豪から技ありの2点を奪った柴崎だったが「2位は2位。歴史的には優勝したレアルの名前が残るだけ」と涙した。それでもスペイン紙「マルカ」は「鹿島の宝石」と見出しを立て「あの瞬間から、世界の半分のスカウト網に引っかかった」と絶賛するなど、世界から注目を浴び、17年1月にスペイン2部テネリフェへの移籍が実現。同年夏には1部ヘタフェへ完全移籍し、18年ロシアW杯の日本代表にも選出された。

 ◆安部 裕葵(あべ・ひろき)

 ▼生まれとサイズ 東京都北区生まれ。171センチ、65キロ。

 ▼“本田塾”出身 MF本田圭佑(32)=メルボルンV=がプロデュースする「ソルティーロFC」出身初のJリーガー。

 ▼高校までは無名 瀬戸内高(広島)へサッカー留学も、全国的には無名の存在。当時の監督からは「大学に行け。万が一、鹿島からオファーが来たら考えてもいいが」と一蹴されるも、本当に鹿島からオファーが来る。

 ▼“質問魔” 「どうすればいいですか?」「なぜそう考えますか?」―。小笠原満男、内田篤人ら経験豊かなベテラン勢を質問攻めにするのは日常風景。

 ▼強心臓 免許取得前の若手は、先輩の車で練習場から寮に帰宅するのが鹿島の伝統。年齢の近い先輩にお願いするのが通例だが、安部は新人だった昨年、20歳年上のGK曽ケ端準に「お願いします!」と依頼。周囲を驚かせる。

 

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