【札幌】ペトロ監督、恐れず攻撃的に…チーム史上最高4位導いた指揮官を吉原宏太氏が直撃

スポーツ報知
マフラータオルを掲げる札幌・ペトロヴィッチ監督(左)と吉原宏太氏

 J1北海道コンサドーレ札幌のミハイロ・ペトロヴィッチ監督(61)が、今年も新しい景色をファンに届ける。就任1年目の昨季は、J1でのクラブ史上最高の4位と大躍進。指揮官はどんな理念を持ち、選手を成長させたのか。スポーツ報知評論家の吉原宏太氏(40)が、新春インタビューで、その哲学や2年目のシーズンにかける意気込みを聞いた。(構成・砂田 秀人)

 吉原氏(以下吉) 昨季は、前年11位だったチームを4位に導く素晴らしい結果を残した。1年目で、こうなる手応えはあったのか?

 ペトロヴィッチ監督(以下ペ) まず、私の考えではプロになる選手にそれほど大きなレベルの差はない。ただ強豪チームでは、自分たちが常に勝たなければというメンタルを植え付けられる。これまでの札幌は残留が目標になっていた。気持ちの部分で、違いが生まれていたと思っている。

 吉 それでは、浦和から札幌に来ても選手の質に違いは感じなかった。

 ペ そう。だから私はまず、このメンタルを変えなければいけないと考えた。札幌は残留を目指すチームじゃない。もっと上を目指してという、気持ちの変化を選手たちに求めた。そうでないと、いかに選手としてのレベルが上がっても、我々はいつまでもエレベータークラブのままだと。例えば、浦和などは毎回勝たなければいけないというプレッシャーの中で戦っているが、札幌は1勝してそのあと2連敗しても、次引き分けてその次勝てばいいというメンタルだった。個の選手の違いは多少なりともあっても、組織力で太刀打ちはできる。精神面の変化を起こすことによって、より自分たちは前進できるものだ。

 吉 監督を見ていると、ユーモアがある一方で厳しさもある。試合中、ずっとグラウンドに立っているとか。その根底にある哲学は?

 ペ 私は指導者として、選手に対して常に正直であることを大事にしている。それは褒めるだけじゃなく、ダメなものはダメとはっきり言う正直さだが、そのためには選手との信頼関係をしっかり作らなければならない。私が言うのなら、厳しいことでも「そうだな」と思ってくれる関係を築くこと。信頼がなければ、選手を批判した時に「監督は俺のことが嫌い」となってしまうが、信頼があれば「監督は自分のことを気にしてくれている」と感じるもの。信頼をしっかり築けば、その場ではなかなか受け入れられないことでも、冷静になった時に「チームが強くなって欲しいから、あえて厳しいことを言ってくれているんだ」となる。

 吉 指導の上で心掛けてきたことは?

 ペ 私が狙うのは攻撃的サッカー。そのためには、ミスがなくても、アリバイ的に相手の怖くない所にばかりパスを狙っていたら、ゴールにはいつまでたっても近づかない。日本人の選手はまじめすぎる部分がある。指導者がこうしろと言ったら、そればかりをきっちりやりたがる。私自身は練習の中で、試合で起こりうる状況を作り出し、選手にインフォメーションを与える。ただ最終的には試合の中での一瞬を、選手が自分で判断しアイデアを出さなければいけない。それが例えミスになっても、チャレンジした素晴らしいミスならば、私はブラボーと言う。トライがなければ、我々のような攻撃的なサッカーはすることができないのだから。

 吉 監督が昨季、ターニングポイントと思った試合はありますか?

 ペ 0―7の川崎戦(18年9月15日、等々力)かな。

 吉 あの試合ですか。僕もいろんな指導者に会ったけど、負けた試合を挙げる人は恐らくいないですね。

 ペ 確かに非常に悔しい結果だったが、そういう中でも選手は諦めなかった。ああいう場面というのはバラバラになりがちだが、チームとして最後まで戦ってくれたことが重要なのだ。札幌は10億も20億も出して選手を買ってくるようなチームではない。我々が生き残っていくためには、常にチームとしてまとまり、組織力で戦うのが道なのだから。

 吉 今年はどんな1年になりそうですか?

 ペ 私は恐れることが一番の敵だと思っている。私の中に少しでも恐れがあれば、それは選手に伝わり、萎縮したプレーとなって現れる。私は常に自分の選手を信じているし、常に自分の仕事を信じている。その自信が、サッカーに対して何も恐れないという私の信念につながっている。私は常に選手を前進させられるし、このチームは必ずいい結果をもたらしてくれると日々信じている。昨年、我々は4位という結果を残した。今年は当然、去年を超えるのが目標だし、よりベターなものを求めていく。リーグ戦だけでなく、ルヴァン杯、天皇杯でもしっかり結果を求めていきたい。我々が北海道の方々と共にあるということを、更に感じられるシーズンに、今年はしてみせる。

 ◆ミハイロ・ペトロヴィッチ 1957年10月18日、旧ユーゴスラビア・ロズニツァ生まれ。現役時代はMFとしてレッドスター(旧ユーゴ)などで活躍。同国代表で1試合出場。引退後はSグラーツ(オーストリア)などの監督をへて、2006年6月にJ1広島監督に就任。12年から17年7月までJ1浦和の監督を務め、昨季から札幌監督を務める。16年にルヴァン杯優勝。天皇杯では広島と浦和で準優勝を各1回経験。愛称はミシャ。

 ◆吉原 宏太(よしはら・こうた)1978年2月2日、大阪・藤井寺市出身。和歌山・初芝橋本高から96年、当時JFLの札幌に加入。2000年にG大阪へ移籍後、大宮、水戸でプレーし12年に引退。ポジションはFW。J1通算228試合出場58得点、J2通算130試合33得点、JFL通算39試合14得点。日本代表1試合出場無得点。2013年からスポーツ報知北海道版「宏太’sチェック」で評論を務める。

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