興国流「考えさせる」指導術…サッカー部全国出場0でも2年連続J3人内定

スポーツ報知
昨年12月18日、興国高校のJリーグ内定合同記者会見で記念写真に納まる(左から)内野監督、起、村田、中川

 各地で続々とJクラブが2019年シーズンを始動させた。興国高(大阪)サッカー部から入団した3選手も各チームで新たなスタートを切った。同校からは2年連続で3人のJリーガーが誕生。全国大会出場経験がないにもかかわらず、毎年のようにプロに選手を送り込めるのはなぜなのか。

 特徴的なのが練習メニューだ。1日の練習のうち最低30分は個人トレーニングの時間が設けられる。「勉強に置き換えても一緒。授業だけでは賄えない。自分の時間で弱いところを高めるんです」と内野智章監督(39)。「ぼーっとするのはなし」が唯一のルール。最初は何をしたらいいか戸惑う生徒たちも、徐々に自ら課題を見つけ、取り組むようになるそうだ。毎週水曜には外部の先生を招いてヨガや器械体操も行っており、Jの関係者から「興国の選手はしなやか」と評判の柔らかい体を作り上げる。

 内野監督と選手とのやり取りはよくあるノートではなく「電車でも打てるし、タイムリーにやり取りができる」と全てLINEで交わされるのも興国流だ。試合の反省のほか、指揮官から参考にすべき動画や記事を、選手個人に送ることも日常茶飯事。何か役に立つものはないか、自主練で生かせるものはないか、内野監督は「空き時間はネットサーフィンです」と笑う。

 サッカー部は修学旅行ではサッカーの本場、スペイン・バルセロナを訪れる。約10日間の日程で、一昨年には初めてバルセロナの下部組織との試合も実現。世界との差を身をもって感じることで、新たな課題も多く見つかるという。現在神戸でプレーするFW古橋もかつては現地でバルサの試合を生観戦した1人。その時「すげえ~!」と言って見ていたMFイニエスタと今ではチームメートとなり、同校では「興国ドリーム」と呼ばれている。自ら考え行動できる力をつけることで、プロでも活躍できる選手が育つ。そんな“興国流育成法”で、これからも優秀な人材を輩出し続ける。(筒井 琴美)

 ◆内野 智章(うちの・ともあき)1979年5月31日、大阪府堺市生まれ。39歳。小学3年で「白鷺サッカー少年団」でサッカーを始める。初芝橋本高校では1年時に、全国高校サッカー選手権大会でベスト4進出。高知大を経て、愛媛FCに入団したが体調不良で1年で退団、引退した。2006年から興国高の体育教師、およびサッカー部監督を務める。

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