【鹿島】“戦力ダウン”下馬評は適材適所補強と若手成長で覆す…PO勝利の背景を「読み解く」

スポーツ報知
前半18分、先制ゴールを決めた伊藤(左から3人目)を祝福する(左から)レオシルバ、永木、1人置いて、土居、セルジーニョら鹿島イレブン(カメラ・宮崎 亮太)

◆ACL▽プレーオフ 鹿島4―1ニューカッスル(19日・カシマスタジアム)

 鹿島(Jリーグ3位)がニューカッスル(オーストラリア)を4―1で破り、本戦出場を決めた。横浜Mから加入のFW伊藤翔(30)が先制点を奪い、DF山本脩斗(33)のゴールで勝ち越した。2004、05年のアルイテハド(サウジアラビア)に続く史上2度目の連覇の挑戦権を獲得した勝利の背景を、岡島智哉記者が「読み解く」。

*  *  *

 伊藤が力強く拳を突き上げた。前半18分、相手GKが弾いたボールがゴールライン上付近へ。体ごと突っ込み、ゴールをねじ込んだ。本戦出場をかけた一発勝負。「かっこよく決めたかったけど、先制点が取れて良かった」。負傷のFW鈴木優磨に代わる先発出場で貴重なゴールを挙げた。

■全盛期は「今」

 昨年12月、「鹿島が伊藤にオファー」という情報を耳にした。思わずうなった。「さすが鹿島。そこに目をつけたか」。17年の横浜M担当時から伊藤の能力は熟知していたつもりだ。Jクラブを経由せずに仏2部グルノーブルへ移籍した経歴から「早熟型」と見られがちだが、昨季公式戦17得点の伊藤の全盛期はまさに「今」。18年に鹿島担当になって以降も、彼以上にシュート練習でネットを揺らすFWは見たことがない。爆発力こそないが、安定感と献身性はこの上ない選手だ。

■「4番打者だけで野球はできない」

 DF昌子源(26)ら主力が去った今オフ、J1からの補強は伊藤とMF白崎凌兵のみ。大物外国人の獲得はなし。やきもきしたサポーターも多かったはずだ。だがオフを迎えるにあたり、強化責任者の鈴木満常務は補強方針をこう語っていた。

 「4番打者だけでは野球ができないのと一緒。チームの中に役割があって、合う人を取らなければならない。『ここまで伸びてくれるはず』という若い選手の伸びしろにフタをするようなことはしてはいけない」

■鈴木優磨の独り立ち

 大物の獲得が必ずしも戦力アップにつながるわけではない。サッカーゲームの世界とは違う。得点力不足で無冠に終わった17年オフ、鹿島はFWの補強を見送った。「伸びしろに懸けた」(鈴木常務)という祈りにも似た思いは、ACLでMVPを獲得するなど成長したFW鈴木優磨の独り立ちという成果を生み出した。

■「この勢いを継続していく」

 伊藤は30歳という年齢での加入の意味も理解している。「(山口)一真も結果を出しましたね。若い選手が活躍するとチームに勢いが出る」。途中出場で4点目をアシストした若手の活躍に目を細めた。鈴木やMF三竿健斗、DF内田篤人らチームの“4番打者”も続々と全体練習に合流。実戦復帰は近い。伊藤は「この勢いを継続していく」と23日のJ1開幕戦・大分戦(カシマ)も見据えた。戦力ダウンの下馬評は、適材適所の補強と“フタ”をされなかった若手の成長で覆していく。(岡島 智哉)

 ◆伊藤 翔(いとう・しょう)1988年7月24日、愛知・春日井市生まれ。30歳。4歳でサッカーを始め、中京大中京高から2007年にフランス2部(当時)のグルノーブルに加入。10年から清水、14年に横浜Mへ移籍。昨季は26試合に出場し自己最多タイの8得点を挙げた。J1通算182試合37得点。184センチ、76キロ。右利き。

サッカー

×