大坂なおみ、夢かなえた102年の悲願…支えた父の教え

スポーツ報知

◆テニス 全米オープン第13日 ▽女子シングルス決勝 大坂なおみ2―0セリーナ・ウィリアムズ(8日、米ニューヨーク)

 【8日=大和田佳世】大坂なおみ(20)=日清食品=が、日本勢初の4大大会シングルス優勝の偉業を達成した。憧れの元世界女王セリーナ・ウィリアムズ(36)=米国=をストレートで撃破。大一番にも動じず、パワー負けしないショットと丁寧なプレーで、いら立ち自滅していく相手や観客の大ブーイングに集中を乱されることなく最後まで戦い切った。アジア勢初の全米制覇で賞金380万ドル(約4億2180万円)を獲得し、世界ランクも自己最高の7位に上がることが決まった。

 大坂が放った182キロのサーブがセリーナのラケットをはじいた。鈍い音が約2万4000人が見守るセンターコートに響く。その瞬間、涙があふれた。日本勢の4大大会初挑戦から102年。男子のエース錦織圭(28)=日清食品=もなし得ていない頂点に初めてたどり着いた20歳は「いろんな感情がこみ上げてきた」と困惑した表情を浮かべた。

 憧れの舞台に、憧れの相手。セリーナの入場前の姿に大歓声がわく圧倒的アウェーだったが、「ファンじゃない。私は対戦相手。彼女はスロースターター。出だしは積極的にいく」と一気にスイッチオン。左右に振られてもしっかり追いつき、パワーでも対抗し焦りとミスを誘った。サーブも約30キロの緩急差を使い分けて的を絞らせない。第3ゲームでブレイクに成功し、5ゲーム連取などで第1セットを押し切った。

 第2セット第4ゲーム。4度目のピンチををしのぎきれず、初めてブレイクされた。コートに背を向け、後方の壁と向き合うこと数秒。「次をキープされたら観客は熱狂して彼女が元気を取り戻してしまう。危険」。引きずらないように気持ちを切り替えた。最初のポイントで、渾(こん)身のフォアハンドストレートでリターンエース。気迫がダブルフォルト2つを誘い、ブレイクバックに成功した。

 「我慢」が一つのキーワードだった。セリーナの練習相手を長年務め、昨年12月にコーチに就任したサーシャ・バイン氏(33)が、持ち味のパワーを勝負どころで使うために教え込んだ。3月のBNPパリバ・オープンで現NO1のハレプ(ルーマニア)ら強敵を次々と破りツアー初優勝。我慢が「切り替え」と「冷静な判断」を生み、全て強打しなくても勝てることを学んだ。「あの経験が大きかった」と、つかんだ自信は現役最強の相手を目の前にしても揺るがなかった。

 しかし、大坂のブレイクバックが、セリーナに火を付けた。ラケットをたたき付け警告。主審に激しく抗議し大ブーイングが加勢する。暴言を吐き3度目の警告で第8ゲームはプレーせず落とす荒れた展開。初めての4大大会決勝を戦う大坂には厳しすぎる状況が待ち受けていた。支えになったのは、3歳でテニスを始めた時からの父レオナルドさんの教え、技術より「精神的に強くあり続けること」だった。

 過去2年、試合中に取り乱して泣いた姿はなかった。第10ゲームではこの日最速約190キロのサーブを打つなど自らのプレーを貫いた。「父とたくさん会話をしてきて、長いプロセスがあった。彼が何を教えたかったのか、やっと理解できてうれしい」。会場のある公園内の公営コートで父と、姉と始まった夢は一つ実現した。次は20年東京五輪金メダル、世界ランク1位。新しい夢をかなえていく。

 ■優勝者は…

 ▽賞金 380万ドル(約4億2180万円)

 ▽決勝翌日 ニューヨーク市内の観光名所で写真撮影

 ▽獲得ポイント 2000ポイント。世界ランクが自己最高を更新し7位に

 ▽翌年の待遇 男子シングルス優勝者とともに、大会前の組み合わせ抽選イベントに呼ばれる。主な有力選手は開幕2日前会見だが、開幕前日に会見

 ▽トロフィー ティファニー社製で高さ30・48センチ、幅36・83センチ(持ち手含む)、重さ約2268グラム

 ▽男女シングルス優勝者一覧ボード 会場内にある金色のボードに名前が刻まれる

 ▽アジア初 全米では初。他の4大大会では李娜(中国)が11年全仏、14年全豪を制している

 ▽決勝対戦相手との年齢差 大坂とセリーナは16歳20日の差。全米決勝では1991年のモニカ・セレシュ(17歳)VSマルチナ・ナブラチロワ(34歳)の17歳45日に次ぐ記録。この時も年下のセレシュの勝利

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