大坂なおみ、ヨネックスの契約のきっかけは母からの手紙 米山勉会長が明かす10年間の交流とジュニア育成への思い

2018年10月19日10時0分  スポーツ報知
  • 大坂なおみ
  • 大坂へエールを送ったヨネックスの米山勉会長

 女子テニスのWTAファイナルは10月21日からシンガポールで行われる。9月の全米オープンで日本勢で初めて4大大会女子シングルスを制し、大会初出場となる大坂なおみ(21)=日清食品=へ、契約するヨネックス社の米山勉会長(62)がエールを送った。

 米山会長は全米オープン決勝を自宅のテレビで見ていた。絶対女王のセリーナ・ウィリアムズが取り乱して審判に猛抗議する姿に驚いた。

 「セリーナでもああいう風になるんだ、と。(大坂が)勝ったのはうれしいけど、試合展開には驚きました。その後は何回もビデオを見ましたが、大坂選手のショットの安定性がセリーナの想像を上回るほどすごかったのでセリーナが乱れたと思う。セリーナの動揺が一番の驚き。でもそれをやったのは大坂選手だから、やっぱりすごいなあ、と」

 大坂が10歳だった2008年、米フロリダ州に住んでいた大坂の母・環(たまき)さんから、米山会長(当時は社長)のもとに1通の手紙が届いた。07年に社長に就任し、将来の業績向上のためジュニア育成重視を改めて打ち出したばかりのころだった。

 「お母さんから『さらに強くしたいのでサポートしてください』というような内容の手紙をいただきました。バドミントンではトップだったけど、社長になって次はテニスでも世界のトップになろうとジュニア育成に取り組もうと思っていた時期だったから嬉しかった。丁寧に一所懸命に、娘である大坂選手のために時間をかけて書いていただいたことに感銘を受けた」

 すぐ、ロサンゼルスにある子会社に「まず訪問してお話をうかがって、それでサポートするかどうか判断して欲しい」と命じた。

 「とんでもなく素質があってすごい選手と判断したから、サポートすることになりました。ただそれは、他のジュニアの選手への判断基準と変わりません。大坂なおみだからというわけじゃなくて、お母さんが時間をかけて手紙を書いてくれたことに心を打たれた。ゴルフの石川遼選手も用具モニターだったが、お父さんが丁寧な文章を何ページも書いて写真を貼って成績もつけて提出してくれていた。こういったことは短時間でできるはずもなく、心のこもった対応で非常に感銘を受けた」

 当時はアマチュアだったため、大坂へのサポートは用具の貸与だけ。14年にプロとして契約を結んだが、今年3月のBNPパリバ・オープンを視察した米山会長は、ある変化に気付いた。

 「サーシャ(バイン・コーチ)が来てから(大坂は)我慢することを覚えていた。その上でスケールの大きさは崩さないようにやっていた。彼のコーチングを見て、選手はコーチング次第でこんなに変わるんだと。その場で(ヨネックスと)契約を打診することになりました。このコーチングを日本に、世界に広めたらいいな、と。コーチに教えて、そこからジュニアへ。底辺を広げることが何より大事ですから。だから(全米OP後に)サーシャのコーチングクリニックを実施しました」

 10年前から続けていたジュニア育成への強い思いが、大きな花を咲かせた。現在は米国、欧州に専任者を設け、有望なジュニア選手のサポートを続けている。4大大会通算3勝のアンゲリク・ケルバー(ドイツ)も12歳からヨネックスのラケットを使っている。

 「ケルバーも身長は日本人男性ぐらい(173センチ)しかないけど、走って走って16年の全豪、今年の全英でもセリーナに勝った。昔は海外の選手にラケットを渡しても、どこかに行っちゃったり(笑)。海外では無名でしたから苦労しました。社訓にも繋がる『国籍は世界だ』をもう1回スローガンにしたんです。バドミントンはブランドとしても世界一になったと思えるけど、テニスはなっていない。実現はしなかったけど、自分が社長のうちに世界一になるぞと思い続けていた。ようやく2年前ぐらいから、ヨネックスのラケットを使うジュニアが目に見えて増えてきた。大坂なおみ、彼女だけ突然出て来たわけじゃないんですよ」

 今年の全米オープン・ジュニアでは、出場選手の約3分の1がヨネックスのラケットを使用するなど、海外での躍進は目覚ましい。

 「選手の国籍は関係ありません。世界中の人がお客さまですから。選手にブランドを広めてもらい、選手はスポーツを続けるためのサポートを受ける。持ちつ持たれつです。ヨネックスの製品の良さを多くの人に広めてもらって、買ってもらって、その収入から契約を続けていくんです」

 同社はマルチナ・ナブラチロワ、伊達公子、マルチナ・ヒンギス、スタン・ワウリンカらトップ選手との契約が多い。その理由とは。

 「創業社長(米山稔ファウンダー)から『トップ選手ほど勝ち負けで全然違う』と言われてきました。勝たなきゃいけない人と契約することによって製品開発が進む。彼らは究極のところで用具にこだわる。トップ選手と契約して勝ってもらうために動くと、会社の技術がどんどん上がるんです」

 ジュニア育成にも先を見据えた考えを持っている。

 「次の世代がゲームを変える。新しい世代にアプローチすることで製品開発で先んじることができるんです。僕らのころは、いかにネットギリギリの低さで深いボールを打つかが勝負だったけど、今は打った瞬間にアウトと思うような高いボールが落ちてくる。プレースタイルが変わっているので、用具が追いつかないと負けるんですよ」

 大坂はまだ20歳。最後に温かいエールを送った。

 「特に女子選手はコーチや家族とのつながりが重要。そこがうまくいっているので全く問題ないと思います。彼女はものすごくシャイだけど、今のままの素直な気持ちが続けば世界のトップであり続けられる。心から応援しています」

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