バスケ日本代表44年ぶり五輪へ前進 4連敗から3位急浮上でW杯圏内

スポーツ報知
W杯アジア予選の道のり

◆バスケットボール男子 W杯アジア2次予選 ▽F組 日本86―70カザフスタン(3日・富山市総合体育館)

 世界ランク49位の日本は、同70位のカザフスタンを86―70で下し6連勝。W杯出場圏内の3位に浮上した。通算6勝4敗。日本2人目のNBAプレーヤー渡辺雄太(24)、米ゴンザガ大の八村塁(20)不在の中、211センチのファジーカス・ニック(33)=川崎=が41得点と躍動した。20年東京五輪開催国枠獲得のため、世界に力を示す必要がある日本男子。予選を突破し、来年のW杯(中国)でアピールできれば1976年モントリオール以来、44年ぶりに五輪の舞台が見えてくる。

 ファジーカスの放ったシュートは、次々とリングに吸い込まれていった。第2クオーター残り4分からゴール下で6連続得点を挙げ、31―29と日本が初リード。その後も1対1からターン、ジャンプ、フックなど多彩なシュートを交えた攻撃で41得点。リバウンドは15本。ゴール下を圧倒し、大一番を制して6連勝だ。

 試合後のインタビューでは「ありがとうございます!」と4000人超の観客に日本語で感謝を述べ、「前戦(11月30日のカタール戦)があまりよくなかったので、しっかりしないとと思った。勝たないといけない試合で勝てて良かった」と、無邪気な笑顔を見せた。

 米国出身で最高峰のNBAでプレー、その後は欧州のチームなどを渡り歩いた。12年に来日しプレーして以降、日本人の優しさに触れ4月に日本国籍を取得した。Bリーグでは16―17年シーズンMVP。東京五輪を見据え、今夏には左脚の手術を決意した。

 米国で1か月半リハビリし、体の使い方や走り方など一から見直した。リハビリ施設ではプロ野球ソフトバンクのデニス・サファテ投手とも出会い「野球界の待遇の良さに驚いた。彼とは同じ年にMVPを獲得して『おもしろいね』と話した。次は日本で彼に会いたい」。他競技のアスリートとも交流が増え、今では大きな励みとなっている。

 日本が大好きで、3月に誕生した息子には、「海渡(カイト)」と漢字の名前を付けた。カタカナも書くことができ「どこ行った?」「何食べる?」など日常会話はお手の物。道に迷った外国人観光客に東京駅までの行き方を丁寧に教えるなど、複雑な電車事情もすでにマスターしている。

 0勝4敗の崖っぷちから、W杯出場圏内に浮上。残る試合は来年2月、敵地でのイラン戦、カタール戦で、自力でW杯出場を決めれば、1998年ギリシャ大会以来(2006年大会は開催国枠で出場)となる。ファジーカスは「もう一度、41得点取りたい」と頼もしい。まだ開催国枠を手にしていない男子代表がW杯で力をアピールするため、日の丸を背負い、ファジーカスは攻め続ける。(小林 玲花)

 ◆ファジーカス・ニック 1985年6月17日、米国生まれ。33歳。ネバダ大卒業後、07年のNBAドラフト2巡目でダラス・マーベリックスから指名を受ける。08年にロサンゼルス・クリッパーズに移籍。その後はベルギー、フランスなどでプレー。12年に来日し、東芝(現・川崎)に加入。Bリーグで16―17年シーズンのMVP、得点王、ベストファイブに選出。211センチ、111キロ。

 ◆バスケ男子代表の東京五輪への道 五輪出場枠は12。日本は開催国枠での出場が確約されておらず、五輪予選を兼ねる19年W杯16強以上などで国際バスケットボール連盟(FIBA)に力を示すことが必要。五輪開催国枠は19年12月までのFIBA中央理事会で判断が下される。日本男子は五輪出場なら1976年モントリオール以来44年ぶりとなる。W杯には世界から32チームが出場。アジア枠は7チームで、2次予選で12チームを2組に分け各組3位以内と、4位のうち成績上位の国が出場する。

 ◆W杯アジア2次予選F組の今後 現在9勝1敗のオーストラリアは既に3位以内のW杯出場が確定。残る2枠をイラン、日本、フィリピン、カザフスタンで争う。来年2月21、24日に残る2試合を開催。日本が21日にイランに勝利し、同日にフィリピンがカタールに敗れると、日本は24日のカタール戦を待たずに3位以内が決定。勝ち点は勝利が「2」、敗戦が「1」。順位は勝ち点で決まり、並んだ場合は、当該チーム同士の勝ち点、得失点差の順で決める。

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