ジョセフHC、ラグビーW杯8強入りへのカギは「オフ」「加速」と「折れない心」

スポーツ報知
沖縄・読谷村の代表候補合宿で巨大シーサー像をバックに仁王立ちしてラインアウト練習を見守るジョセフHC

 W杯開幕まで20日であと半年。日本代表を史上初の8強入りへ導く使命を背負うのが、ジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチ(HC、49)だ。ラグビー王国ニュージーランド出身で、2015年イングランド大会で日本を歴史的3勝に導いた前指揮官エディー・ジョーンズ氏とは異なる強化を積んでいる。選手を勤続疲労させないために休暇を与える“働き方改革”の導入などを実践。王国式強化の手応えを聞いた。(構成・小河原 俊哉)

 インタビューに応じたジョセフHCは、就任からここまでの2年半を振り返った。

 「最初に掲げた理想からすると、想定通り、狙い通りにきている。非常に満足している」

 2月から強化合宿の前には、初めて6週間という長期オフを選手に与えた。前回代表にはなかった“ラグビー版働き方改革”だ。

 「世界の強豪と戦う下準備として、日本はこれまで選手にしっかりと休暇を与えていなかった。NZは、さらにレベルの高いラグビーをするが、最低でも2~3か月のオフはある。だから(日本もオフがあった)今回は最高の準備ができている。W杯で勝つことの一点集中のみ。そしてベスト8を目指す」

 前回大会で、オーストラリア出身のエディー・ジョーンズ前HC(現イングランド代表監督)は日本人の「従順」「勤勉性」に着目し、運動量を戦術の根幹にした。ボールを保持して自陣から攻め続けるスタイルで大躍進。しかし、トライを取るまでに時間がかかり、選手の消耗も激しかった。3勝1敗で3チームが並んだ1次リーグはトライ数の少なさが敗退につながった。

 ジョセフ日本は、キック戦術を多用し臨機応変に攻めるスタイル。陣地を進め、キックパスも駆使して効率的にトライを狙う。昨年11月のニュージーランド戦ではSO田村(キヤノン)のキックパスからの一発トライなどW杯2連覇中の王者から計5トライを奪取。攻撃力の高さは証明した。

 「実はギャンブルが好きなんだ(笑い)。家庭ではトランプで晩飯の順番を決めたりするし。極論だが、首脳陣も勝負に出ないといけない。強豪に勝つためにはリスクを背負わないと。保守的じゃダメなんだ」

 前代表を特色づけた運動量に代わるのが、俊敏性を生かした「加速」。試合中に急加速する回数は1分間で平均0・8回以上が目標だった前HC時代から、1・5~2回に大幅に増やした。防御でも加速を重視し、ダッシュで相手との間合いを詰める。試合中に加速を繰り返す体力も底上げし、フッカーの堀江も「エディーの時よりしんどい」と話す。この2年半のテストマッチは6勝1分け11敗ながら善戦を演じてきた。

 「勝ちにこだわった攻撃的なアプローチが必要だ。最高かつ、これがジャパンというラグビーを目指す

 W杯までの最大の課題になるのはエディー・ジャパンが武器としていたスクラム、ラインアウトのセットプレーの強化となる。

 「いまは60%は満足する内容だが、あと40%は改善の余地がある」

 母校のオタゴ大ではスポーツ心理学を学んだ。代表に求める究極の戦う心理とは。

 「最も重要な鍵になるのが瞬間、瞬間での判断力。それには多大なる強さ、レジリエンス(折れない心)が必要。絶対につかみ取るという精神力なんだ」

 17年5月の京都でのW杯組み合わせ抽選会場では、ニュージーランド代表のハンセンHC、イングランド代表のエディー監督に挟まれ写真撮影した。当時は「巨大マグロに挟まれたイワシのような心境だ」と語った。

 「2年前はそう言ったかな。でも、今はイワシだと思っちゃいないさ。それよりも、どのチームが4強入りするか賭けてみないか?(笑い)」

 ◆ジェイミー・ジョセフ
 ▽生まれ 1969年11月21日、ニュージーランド(NZ)・ブレナム生まれ。49歳。NZのオタゴ大卒。
 ▽サイズ、代表歴 身長196センチ、体重100キロ超。現役時代はフランカーやNO8、ロック。W杯は95年にNZ代表(キャップ数20)で準優勝。99年に日本代表(同9)の桜のジャージーを着て戦った。16年9月から日本代表HC。
 ▽HC就任前 15年シーズンにスーパーラグビーのハイランダーズ(NZ)を優勝に導いた。国代表HCは自身初でもある。
 ▽日本愛 サニックスに所属した95年から02年まで日本滞在。平仮名なら読める。好きなカラオケはザ・ブームの島唄。「歌詞が全部平仮名なんだもん。トンコツ、カエダマ、シマウタ、最高!」
 ▽ギャンブル 競馬好き。「父が競走馬を持っているんだ。僕も子馬を友人とシェアして2頭、持っている」

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